これはCheese! で連載されている藤間麗さんの『王の獣~掩蔽のアルカナ~』に対して、ド素人の謎生物が個人的意見等を語った物です。
投稿後にチョイチョイ編集をしている為、23話までを見ての発言だと思ってください。
更にこの記事には、以下の成分を含みます。
- ディスリ
- ネタバレ
- 他作品での例え
なので、この作品を好きな人は特に、見ていて気持ちがいいものではないのですが、それでも見たいという奇特な人はゆるく見て行ってね!
(尚、もう面倒なので私のこっちのブログでのキャラ設定はほぼ破棄したよ……)
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はじめに
漫画はけして現実を忠実に表現する必要はないし、監修を付けている漫画でも、事実とは違う風に表現する事もある。
つまり、面白ければそれでいい。
と思っているのだが、Cheese! と私は相性が悪すぎた。
これは、好みに対極をなしているにも関わらず、王の獣キャラが好きすぎる&考察要素のみで掲載誌を買って単行本まで買ってしまったが、未だにストーリーは設定や表現などから好きになれず、王ケモアンチと化した哀れな謎生物が、伏線回収には多少期待しつつも個人的不満点を吐き出したくなって、うん時間かけて書いた記事。
である。
過去作の方が好みだった?
王ケモ以外の藤間さん作品は無料試し読みしか見ていないんだけど、こんな感じである。
黎明は続きが気になった。が、ネタバレで最後のオチを見て、あまりのショックに全てを忘れる事にした。
ロッカメルトは男性が多いと感じたけど(私は男女のバランスがいい作品が好き)、面白そうと感じた。
しかし水神は、右も左も分からない場所に移された幼い主人公が痛めつけられて、可哀そうになり過ぎてしまってストーリーを楽しむ余裕がなくなるほど胸が痛くなってしまった。
そして「ここは大人の、できれば女性の母性が必要では?」って疑問に思う所も出てきたし、それがしっかり描かれていればストーリーに引き戻されていたかもしれないんだけど、それもなかった。
あとネタバレでオチを見たんだけど、好みではなかった。
ごめん私、カエルが先か卵が先かな話とか、タイムパラドックスしちゃうタイムスリップ系は好みじゃないんだ。
そして実は暴走記事まとめにある『こんな記事を作った切っ掛け』で、母(本体)が黎明のアルカナを見てから王ケモを見ている様に書かれているが、実は逆である。多分……。(なんせ件の記事を書いた時すらうろ覚え)
そして何故か、黎明の方が設定とかがスッと入ってきやすくて、疑問に思う事もあまりなく、見た順番的にも黎明が後作だと思っていた。
というちょっと不思議な現象が起きていた気がする。
黎明の表現が自分と相性が良かった、もしくは気のせいの可能性はあるが、もしかしたら藤間さんの作品は年々私の好みから遠ざかっているのかもしれない……。
設定
一つ一つは面白いと思うけど、多すぎて意味が分からなくなった。
アルカナっていう特殊能力がある世界の中華風ファンタジーの国が舞台で、亜人が人間の道具として存在し差別される中、心が荒んだ孤独な復讐者の女の子が女を捨て男として生き、性別を偽り隠し軍部でサイキョーの名を手にし、天耀の従獣になって、弟の死の真相と犯人捜しをしつつ帝位継承戦やりながら亜人の解放も目指す最中に恋愛……って。
それぞれ、生きるジャンルも、映えるシチュエーションも、萌えるポイントも違う。
その上絡めてくる主要メンバーが多い。
もちろん上手くまとまっていれば楽しめたと思う。
けど、アクションするかと思えばさほどアクション要素はなく、だからと言ってミステリーも手に汗握る駆け引きも頭脳戦もなく、目立つのは藍月と天耀の交流と恋愛要素。
蘇月惨殺事件の犯人捜しも、旺眞を調べるまではまぁ良しとして、江凱に対しては受動的な印象が強く能動的に見えない。
差別表現も思い出したかのようにやって来るのみ。
なので藍月だけでも
アニメ『AVENGER』のレイラに、漫画『今まで一度も女扱いされたことがない女騎士を女扱いする漫画』と、漫画『俺の執事(♀)がイケている』
要素をぶち込んだみたいに感じる中、更に他の設定も入り込み、どっち付かずで忙しくグシャグシャとして見えた。
でも掲載誌の傾向や雑誌&単行本等にある煽り文句から『一番見せたいのは、イケメン皇子達の魅力と、皇子とヒロインの禁断の愛なんだろうな』
ってメタ推理はできる状態で、漫画としてはあまり楽しめていない。
でもキャラは可愛いから愛でてるんだけど、これだけ設定盛ってると今後の展開や終わり方に嫌な予感が。
更に設定が作り込まれていないのでは?
と感じる部分もあり、それが作者の足を引っ張っている気がするので、それ含めて戦慄してる。
不遇のヒロイン太博さん
設定グシャグシャって愚痴ったが、腰巾着と藍月の恋愛なら別にこのままでもまぁ妥協点かな? ってなる。
(私が腰巾着が好きだからというのもあるだろうが、私の中では腰巾着と藍月の恋愛ならば、
このストーリーの中で最も不自然さがなく、説得力があり、無茶を感じさせず、映える。
と思った為)
けど、腰巾着は幼馴染は負けフラグ、不遇のサブヒロイン如くの扱い。
しかもストーリーで表現するのではなく、キャラデザ変更という神の力を使って表現。
作者は腰巾着を描いてて楽しいってツイッターで言ってたけど、この対応はあんまりだったわ……(´;ω;`)
(彩乃のキャラ的に天耀が推しって事にしているけど、実際にこのブログを書いてる奴は、腰巾着こと太博推しで太博ファンの太博オタだよ……。
ちなみに扱いに対して悲しんでいても、新キャラデザは気に入っている模様)
魅力が出しきれてない天耀様
作者が意図してるのか知らないが、天耀は男でありながら圧倒的母性を感じる「こっ……これが、『バムみを感じてオギャる』か……!!!」という、十分魅力的なキャラである。
更に『藍月を女性として意識してしまう』という最恐萌え要素の片鱗すらある。
なのに設定周り、表現、進行の所業か、はたまた腰巾着や兄に美味しい所を取られている為か、あまり魅力を感じない。
構成が
- 最初は藍月の性別に気が付かずに、幼い息子の様に可愛がる。(この時、男ならOKだが女だとアウトな行動を取らせると尚良い)
- 次に藍月が女だと知った天耀の反応を、読者に楽しませる。
- それが終わったら、藍月に対して恋心が芽生える天耀を表現。
- トドメに天耀が藍月を女の子として扱って、恥じらう藍月を見せていく。
とかなら、私は彼の良さをもっと実感できていたと思う。
もしくは策士っぷりを前面に押し出したキャラだったら良かったのかも。
そして藍月を男だと認識しながらも性の対象として意識した後の彼の思考も、
『男なのに男が好きになってしまった』
という葛藤は、あるけどあっさりしているように感じ、
『相手はこんな自分の気持ちを知ったらどう思うだろうか?』
という表現は見当たらず、あまり共感できなかった。
だから愛する愛さない、人間と亜人の差別云々以前に、もっと思う事や葛藤する部分があるんじゃ?
と、なっていた。
それに加え蘇月の事件に対して、ミステリー要素が低いせいか(脳筋娘の藍月さんはまぁ目を瞑るとして)切れ者であろう天耀がまともに刑事や探偵をしてくれないので、
「蘇月の事はもうどうでもいいのかな? 恋愛に生きるのかな?(というか製作者が展開を恋愛度高めにシフトしたか)」
となってしまった。
なのでもしこれが、最初は蘇月惨殺事件にがっつり取り込み事件解決かーらーの~、ドキドキ恋愛編!
というような構成だったら、流れがスムーズに感じたかもしれない。
差別
人間と、それより優れた生物の亜人。という関係性で、人間が亜人を使役しているのは理解し辛かった。
ゲーム『デトロイトビカムヒューマン』と違ってロボットじゃないから、ロボット工学3原則も通用しないし、黒人と違って身体能力が高くて希少価値があるから同一視できない。
希少価値のある愛玩用の生物とも違って亜人は知能がある為、閉じ込めておくなら分かるのだけど、行動を制限する明確な『何か[注1]』がない状態だと納得はできなかった。
あとこの時代って平民の命は軽かったし、お金のない平民が娘を妓楼に売ってたりとかもしてたよね?
漫画『天空の玉座』とか創作物の知識が大半なんだけども。
更に本編では身近な人が亜人に優しくしているし、亜人だけの特別な『差別』は想像しずらいのもあっていまいちピンとこなかった。
漫画『憂国のモリアーティー』みたいにしていたら、分かりやすいんだけど。
もしくは漫画『翔んで埼玉』みたいなギャグ色の強い作品なら「ギャグだから」で済ませた。
そしてアルカナという特殊能力を持つ人が恐れられ差別されているとか、アニメ『スクライド』、TRPG『ダブルクロス』っぽく2勢力に分かれて戦ってるなら何も思わないかな?
あるいは漫画『IT’S MY LIFE』っぽく、種族や能力は違えど人間と同じで良い人もいれば悪い人もいる。
そんな中、大体の人間と亜人は仲良く暮らしているのだが、人間の中には亜人を『獣』と嫌ったり、ペットにしたり、「蛮族」だの「原始人」だのと馬鹿にしたり、道具として利用する人がいる。
特にお高くとまってるプライドたっかい皇族貴族がその傾向にある。
とかなら、特に違和感を感じずに終わったと思う。
そもそも亜人っていうチート能力者(兵器)を人間が使役している時点で、その人間からの解放(軍事力を著しく下げる)って一国家でどうにかなる問題じゃない。
って思うから、恋愛要素は二の次でもいい少年・青年漫画向けに感じた。
男装
性を偽る期間が長ければ長くなるほど、合理性を感じない。
特に軍人って集団行動のイメージがあるし、藍月は下っ端で、それは自分の思うように動けない状況にもなるって事なので難しいと感じた。
軍事時代は協力者がいたとか、宮廷に潜り込んでる期間だけ性がバレない様に偽ったとか、後はギャグ色が強ければ特に何とも思わないんだけど。
名前
弟から姉の情報がもれている可能性等を考え、偽名を使った方が良いかな? となった。
その方が説得力やスパイ感、「女の子の藍月は捨てた」感が出るし、18話での腰巾着との会話で出てきた偽造の話に矛盾がなくなるかと思う。
そう、脳筋娘の藍月さんは「姉の記録が残っていたら面倒」だと言うのに、名前は変えていなかったのだ! \(^o^)/
銀髪だし銀月にすれば、元の名前からあまり離れてないから反応もしやすいし[注2]よかったと思うんだけどね。
表現
どういう展開にしたいのか? 読者にどう思って欲しいのか?
が分かるメタさを感じる事はあったけど、演出や設定などが原因か、言葉での説明が多く感じるのが原因か、説得力を感じず感情移入がしづらい。
もちろん「これはいいな」って描写もあるんだけどね。
蘇月惨殺事件と襲撃・毒茶事件
弟を殺した犯人捜しと事件の真相は、藍月が弟の死に様や宮廷に来てからの事を情報収集している様子や、自分の目的がバレた後に天耀&腰巾着から事件の詳細などを聞いて考察等していれば特に何とも思わない。
しかし藍月は18話以外特に何もしない。
ついでに天耀&腰巾着も推理はしないし、襲撃・毒茶事件が起きた時もミステリーしない。
だから私が考察する事にした。
そしてご覧の有様ですよ……。
家族
藍月と蘇月の思い出が少ない。
その為、藍月にとって蘇月は掛け替えのない家族感が薄い。
それに連鎖して、藍月の決心や必死さが分かりにくい。
もし1話辺りで藍月と蘇月の暮らしが少しでもいいので具体的に描かれていたら、後に出てくる蘇月が殺されたと聞いて宮廷の門に来ていた藍月の必死さとか、絶望感が入ってきやすかったかも。
多分あの2人は両親も居なくて、どこか(妓楼か金持ちの家?)で時々喧嘩とかしながらも仲良く協力しながら生きてきたと思うので。
例えば、子供の頃から人間に仕えていて、仕事は厳しいし人間の子供が羨ましいと思う時や、お父さんとお母さんがいなくて悲しい思いもしたけど、蘇月が傍にいれば元気になれたし苦じゃないから、生きてこれた。
というエピソード、またはモノローグの背景にそういう光景があった上で、蘇月が皇族に奪われ、殺され……としたら、もっと藍月の絶望感は感じれたと思う。
そして、天耀の兄弟の話が出た時に少しでも藍月が「僕達は喧嘩もしたな……」とか「僕達は協力し合って生きてきたけど」
と過去を思い出していたら、藍月と蘇月は仲好し。
というのが分かりやすかったと思う。
人間との格差
ベタだが「私も学校に通いたいな」(時代的に平民は学校に通ってなかったと思うが)とか「好きな人意外とはやりたくない」
など、人間の、子供達の暮らし・恋人達・夫婦や家族を見て物想いに耽り、将来が選べない事に悲しんでる表現をエピソードとして具体的に見せる。
更に妓楼の描写に関しては漫画の『春駒~吉原花魁残酷日記~』ほどじゃなくてもいいので、もう少し妓楼で働き始めた子達の葛藤とかも表現する。
例えば藍月が襲われているシーンをもう少し丁寧に描いて、藍月が人間の男の快楽を得る為の道具になる事への恐怖を見せる。
などがあったら、胸が締め付けられていたと思うし、人間と亜人の格差や人間の国で生まれ育った亜人の過酷さも感じたかも。
信頼
藍月は孤独な復讐者で人間を信用していなかった割りには、天耀にすぐ心を開いているのが不思議だった。
一応4話で信じてもいい? からの天耀に対して信じ切れずに葛藤する描写が10~11話で来ているが、藍月は何度も人間に酷い仕打ちをされて生きてきた設定のはずである。
その為、私ならだが、むしろ無意味に優しい天耀は意味が分からず怖いと感じるか、裏があるのでは? と思うし、腰巾着の態度の方が普通だから身も心も安心する。
そして4話の時点では信じていい? とは言えない。
もしも伝える事が出来ても、信じてまた裏切られるのが怖いから、信じたくない。それに信用は昨日今日でどうにかなる問題ではない。
だから、信じて欲しければ結果を出してくれ。
と、身の程知らずだと分かっていても、天耀の可能性に賭けて発言するに留めるかと。
良かった所
キャラクターはよかった。
それはけして外見ではなく、中身や言動がいいと感じさせた。
ちなみに水神の生贄の時も、主人公が魅力的に映っていた。
そして水神様の方も、彼は人間とは価値観の違う神様なんだ。というのがよく分かる言動を取っており、やはりそっちはそっちで魅力があった。
黎明はよく分からないのだが、ロキが死んでしまった詳細をネタバレで見た時、ショックが半端なかったので……ってか、本気でしばらく落ち込んでたわ!
だったので、多分藤間さんのキャラクターは凄く好きになりやすいんだと思う。
最後に
「何かを表現したいが為の伏線かな?」と感じる事はあるので、今後の展開次第ではストーリーに面白さを感じるかも。
それに後の表現次第では設定・行動等に矛盾を感じなくなる可能性はあるし、最後まで見れば感想が変わるかもしれない。
しかし現時点で、キャラの言動は好きだがストーリーがいまいちで感情移入しづらい為『キャラゲーの漫画版』という印象があり個人的には他人にお勧めできない。
だが主人公の藍月に(個人的には璃琳にも)ひたすらフェチズムを感じるし、男性キャラも各々魅力がある。
その為、無料試し読みやネタバレサイトを見て好みだった人はもちろんだが、キャラ萌えできた人や、2次創作をして楽しみたい人には男女共にお勧めできるかも。
という感じです。
そして王の獣は、作者が表現できる範囲を考慮しつつ設定周りを整理し、しっかり作り込んでいればCheese! 掲載でもストーリーを十分楽しめた予感がするのでもったいないなと感じた。
それに個人的にはだが、そうやって設定等を作り込んだ物を他出版でもいいので、自由度の高い(恋愛を前面に押し出さなくてもいい)少女・女性誌、できれば少年か青年誌で見たかった。
と思わせる作品でした。
水神の生贄も他紙で、親子愛とかも十分描いた作品だったら、多分私は無料試し読みを見た時点で面白い、続きが読みたいと評価してたと思う。
もちろん作者の好みや描きやすいスタイル、短いスパンで新作を出さなくてはいけない事情などなどあるかと思うので、野暮なんだけどね。
というか私、ここまで考えられるならもう自給自足した方がよくね?
注釈
[注1]
奴隷として使役できる術・刻印、行動を制限する首輪など、ファンタジー作品では結構出てくるかと。
[注2]
小説・スレイヤーズのリナ・インバースによる、偽造に関する教えでこんなのがあった。
名前を偽造する時は、名前を呼ばれた時に反応しやすいように、元の名前と似た名前にするとよい。
と……。