Dへの扉

謎生物、地球でやりたい事をする

長閑な国の王とケモノ 第一話『弐の春・白いケモノ現る』

これは『著者:藤間麗 / 出版社:小学館』が権利を有する漫画『王の獣~掩蔽のアルカナ~』の非公式二次創作物です


◆注意する事ばかりで長くなった注意◆

 これは

  • 重度の中二病患者が作った黒歴史濃度の高い「アタイの考えたサイキョーの王ケモ設定!」
  • 原作のネタバレと世界観&キャラ崩壊
  • 女体化
  • 原作を読んでいる事前提だが、読んでいても意味が分かるとは限らない
  • 滲み出る変態性

 を含みます。

 そして私は

  • 小説・漫画・絵等を書くor描くのが得意ではない*1
  • あっぱっぱーだし中華風ファンタジーはもちろん書けん!
  • 王の獣は単行本7巻まで持っているが、それ以外は試し読みや読者の感想等で得た知識しかない*2
  • 王の獣のキャラが好きだがアンチという矛盾の存在

 です。

 それでも見たい人は続きへGO!


 これは昔々のお話。
『アルカナ』と呼ばれる不思議な力を持つ人や、『亜人』と呼ばれる獣の耳と尾を持つ人がいる世界の出来事。
 凪の国と呼ばれる国に三人の皇子がおりました。
 どの皇子もとても優れていましたが、ただ一人天耀様はいまいちパッとしません。

 第一皇子の麗雲様は芸術方面で才があり、第二皇子の江凱様は文武両道。
 この二人の皇子は国民からの知名度が高く人気もあるのですが、天耀様は突き出た能力もなく、優れていないわけではないのに良くできた兄達の影に隠れ特に話題には上がらないのでした。

 そんな天耀様には皇子に付けられる守護者的な存在のアルカナ持ちの亜人・従獣がいません。
 いえ、元はいたんです。でも今はいません。
 天耀様の従獣は、従獣になって一年足らずでどこかへ行ってしまったのです。
 それから天耀様は新しく従獣を付ける事を拒んで生きていました。

 これは、第三皇子・天耀様の従獣が失踪して六年目に突入した壱の春最後の日。
 北西に隣接する国との半年足らずの戦争が終わって数か月後のお話……。

◆*◆

 皇帝陛下であり天耀君のお父様でもある宗現とその従獣・彊虎が、天耀君と太博の元へフラっとやって来て突然こんな事を告げた。

「私もそろそろ皇帝の座を息子達に譲ろうと考えててな、今年中に誰を皇帝にするか発表しようと思っているんだ。
 ただなぁ、私の息子達に限ってそんな事はないと思うのだが、皇帝の座が欲しいが故に他皇子の失脚や暗殺を企てる様な事にもなるかもしれない。
 もちろん私の息子に限ってそんな事はしないと思っているよ。しかし例え息子達がそんな事を考えなくとも、欲におぼれた周囲の者達が皇子を利用しのし上がろうとする可能性もあるだろう。
 そこでだ。天耀、お前には従獣がいないだろう? だから新しく従獣を付けようと思ってな。もう手配もしておいた。
 ほら、これがその者の履歴書だ」
 と宗現はまくし立て、新しく従獣としてやって来る亜人の履歴書を突然の展開にポカーンとなっている天耀に渡した。
 そこには雪という名と宗現直属の部隊所属である事などの他に、輝かしい功績がずらっと並んでいる。
「この子なら強いし信頼も置ける。お前の従獣を全うしてくれるだろう」
「いや、父上! 私は新しい従獣は付けませんっ! それに護衛の者は十分いますし……」
 しかし天耀の隣で静かに立っていた太博は
『正直まともに護衛ができる亜人の従獣がいた方が私は安心だがな。人間対亜人の一対一になった場合、ほぼ確実に人間の方が不利だ』
 とか考えていたが。

 そして宗現は天耀が新しい従獣を付けたがらない理由を知っているものの、この日は引かなかった。
「お前の気持ちも分かるが、次期皇帝を発表して即位させるまでだから我慢をしてくれ。
 じゃぁ、明日やって来るからよろしく頼むよ。
 あと、やって来たら家族に紹介しなさい。ではな」
 と押し切り「はははははは!」と軽快に笑いながら去ってゆく。

 天耀はそんな父と彊虎の後ろ姿を呆然と見送り、項垂れた。

 

第一話『弐の春・白いケモノ現る』

◆◆◆翌日の朝◆◆◆

 雪という亜人がそろそろ到着するという時間。
 項垂れる天耀はハッと顔を上げ「私、父上から嫌がらせされてる?!」と叫ぶ。
 履歴書を見るに雪という亜人は武力はあるがアルカナがない。
 そして天耀には事情があり、家族ならば誰もが彼に新しく従獣を付ける意思がないのは知っているのにほぼ無理やり従獣を付けられた事でそう結論付けたのだ。
 しかし傍に付いていた太博はそれを否定した。
「そんな事はないでしょう。陛下のご説明通りだと思いますよ。それに天耀様は皇帝陛下から一番可愛がられていますし」
 宗現が一番愛しているとされる妃は、才はあるが比較的身分の低い天耀の母・桂花妃である。
 そしてその息子の天耀もそれはそれは可愛がられていた。
「そのせいで江凱様から嫉妬されてましたよね、子供の頃」
「あぁ、その話はやめてくれ……」
 過去を思い出し机に突っ伏す天耀。その姿は、とても情けなかった……。
「ほら、天耀様! そろそろ雪とかいう亜人が来ますよ」
 時計*3を見た太博が天耀を起き上がらせ背を押し、待ち合わせ場所に連れ出した。

 

◆◆◆同時刻・璃琳◆◆◆

「天耀お兄様に新しい従獣が付けられたそうよ!」
 璃琳が母も同じの兄・江凱の宮にやって来て、ビッグニュースとばかりに江凱ではなく江凱の従獣の墨に話し掛けていた。
「そうなんですか?」
 墨もいつもの事なので、特に動じず返事を返す。
「そう。だから早速見に行くわよ!」
「え?」
 璃琳は墨の返事も江凱の許可も聞かず、墨を引っ張って天耀の宮に急行してしまう。
 それを見ていた江凱は飽きれつつもいつもの光景に「あいつら仲いいよなー」と呟く。
 そしてほんの一瞬あれやこれやと考えを巡らせ気を揉んだ後、ため息一つついて天耀の事を考えた。
「新しい従獣ねぇ。……あいつ、大丈夫か?」

 

◆◆◆同時刻・天舞◆◆◆

 天舞は花瓶の花の手入れをしていた。
 しおれた花と古い水を捨て、花瓶を洗い、新しい水を入れて花を生ける。
 広い宮に点在するそれらを見て回るのは大変だが、天舞は花の手入れなど好きなので特に苦も無く行っていた。
 それに今日はいい天気だ。
 しかも占いが趣味の同僚に今日の運勢を占ってもらったら、いい事が起こると言われた。
 だから天舞はいつもよりウキウキしていた。
 のだが……。
「あぁぁぁああああああ~~~!!!」
 花瓶の水を捨てに庭に出た時、彼女は階段で転んだ。
 しかし4段程度の段差である。
 受け身を取りつつ花瓶を守れば、花瓶の水に濡れるかもしれないし正直痛いだろうが大怪我や高価な花瓶が割れる事もないだろう……。
 と一瞬の間で考え覚悟を決めた天舞だが、その体は途中で止まった。
 目の前では、銀髪に水色の瞳をした恐ろしく整った顔立ちの少年がいて、天舞の体を優しく支えている。
「大丈夫ですか?」
 天舞の傾いた体をそっと戻してやるその少年は、まだ幼さが残る中性的で綺麗な声をしていた。
 その体には、白い獣の耳と尻尾が付いている。
亜人の……男の子?』
「あ、はい。大丈夫です!」
 天舞は顔を赤く染めさせると、慌てて少年から少し離れてお礼を言う。
「ありがとうございました! あ、お水掛かってませんか?!」
「大丈夫ですよ。では僕は用事があるので」
 そう言って近くにいた警護の人間の元に駆け寄り、どこかへ立ち去る彼の背中を天舞は
「王子様……」
 と夢見がちな瞳で見送るのであった……。

【ドキイベポイント=1】

 

◆◆◆待ち合わせ時間◆◆◆

 天耀の宮にこっそりやって来た璃琳達は、建物の影から天耀達の方を覗いていた。
 そこは屋外の、ちょっとした広場になっている場所だ。
 天耀は覇気のない顔をして外に設けられた椅子に座っている。
 璃琳はそれを見て『天耀お兄様、やっぱりあまり気乗りしないみたいね』などと思って、天耀は『うまい事断れないかな……?』などと考えながら億劫な気持ちで雪という亜人を待っていた。
 そこに警護の者に連れられた白い亜人がやって来る。
「来たか。こちら……」
 その亜人を見た瞬間、天耀も太博も璃琳も墨も
『蘇月?!』
 となった。
 白い毛、狐の耳と尻尾、水色の瞳、顔立ち……。
 すべて蘇月の特徴と一致していたのだ。
 天耀は『蘇月が帰ってきた?!』と立ち上がり、慌てて駆け寄りそうになって履歴書で見た事を思い出して踏みとどまった。
 そして改めて手元の履歴書を確認する。
 名前:雪、性別:男、生年月日:△○××年 壱の春一日、年齢:十六歳(満年齢)。
 功績の部分には、最近だと北西の国との戦争時に情報収集や敵地の攪乱等で活躍をしていた事が記されている。
「なんだか、蘇月に似てませんか? 同じ狐系っぽいですし。まぁ毛と瞳の色と獣の種類が合致する別人は他にもいますが……」
 太博がそう天耀に小声で伝えている頃、璃琳も困惑していた。
『蘇月……じゃないわよね? だってあたしの情報によると、あの雪とかいう亜人は男だっていうし……』
 そして墨は普段なら動揺などするような性格でもないくせに、何故か今は冷や汗をかいている。
 天耀はしばらく『年齢と外見は蘇月に合致するが……』などと考えていたがハッと我に返ると、椅子に座り直し雪に動揺を悟られないようにしつつ
「来て早々悪いが、どの程度の力か見てみたい。この、太博と手合わせをしてくれないか?」
 と皇子っぽく気品ある雰囲気を出しつつ、無茶振りをしてきた。

 修練用の木刀を用意させている間、太博は小声で天耀に不満を述べる。
「何言ってるんですか! 軍部に所属している亜人相手に真っ向勝負って、私確実に負けますよ?! それに私はマーシャルアーツ系も身に着けてますが、どちらかというと文系ですし……」
「いいじゃないか。どの程度なのかこの目で確かめたい」
「グッ……! これだから甘やかされて育ったぼんぼんは……」

 しばらくして、用意された木刀の短剣を手に取り、雪と太博は向き合っていた。
「勝負の方法はこの木刀で、先に急所の心臓・肺・首の動脈部分の三か所を先に全部突けた方が勝ち。という物だ。準備はいいか?」」*4
 天耀に返事を返す雪と太博。
 だが太博の方は
『あの功績が本当ならば、絶対に勝利できないだろうな。
 ……あの子相手だったら勝てると思うが』
 と、過去を思い出していた。

◇◇◇

 蘇月は従獣になってから戦闘の訓練もした。
 そして人見知りが激しいから慣れるまではと、稽古は太博がつけていた。
 しかし全然うまくできなくて……。
 どうしても目を瞑ってしまうのだ。
 これでは避ける事も、受け流す事も、反撃する事も出来ないと教えたが、あの子はどうしてもこういう事は苦手だった。
 木刀を抱えた幼い蘇月が、申し訳なさそうに目と耳を伏せているのを今でも鮮明に思い出す事ができる。

◇◇◇

「それでは、初め!」
 天耀の合図と共に始まった二人の勝負だが、数分後。
 雪にあっさり負ける太博がそこにいた。
 息がめっちゃ上がってる。
「だから……無理だと……!」
「そこまで。見事だ」
 さわやか皇子フェイスで拍手を送る天耀。
「君はこれから私の従獣だ。短い付き合いになるかとは思うが、よろしく頼むよ」
 天耀がめっちゃいい笑顔でそう言い、そんな天耀を雪は探る様に見つめていた。

 

『弐の春・白いケモノ現る』終

 

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原作の宣伝広告(2022/06/29 情報)

Cheese!(チーズ!)

 2019年3月号(2019年1月24日発売)~2022年8月号(2022年6月23日発売)に王の獣が掲載されている。
 2022/06/23現在、電子版で全号購入可能。
 割高にはなるが連載中なら最も早く王ケモが見られる。
 また、マイクロ&単行本で修正された箇所が電子版でも元の状態で見られると思われるので、単行本とセットで買って変化を楽しみたい人向け。


王の獣~掩蔽のアルカナ~【マイクロ】

 1巻で大体1話分くらいが見られる。(ページ数による)
 先行配信をしているサイトもある。
 連載中に雑誌より安く、単行本より早く王ケモを見たい人向け。


王の獣~掩蔽のアルカナ~

 1巻に大体4話入ってる。(1話分のページ数による)
 時間が掛かってもある程度安くまとめて読みたい人向け。

*1:なお小説を賞に応募した事もあるが1次審査すら通過した事はなかったし評価シートありの所では常に構成の評価が最低ランクだった

*2:試し読みや読者の感想等も36話くらいでよく見なくなり、大して分からない

*3:こちらの世界には機械式時計が少なくとも宮廷内で普及してたりします

*4:うろ覚えだが小説『フルメタルパニック』のナイフ戦闘術的な話で得た知識