◆注意する事ばかりで長くなった注意◆
これは
- 重度の中二病患者が作った黒歴史濃度の高い「アタイの考えたサイキョーの王ケモ設定!」
- 原作のネタバレと世界観&キャラ崩壊
- 女体化
- 原作を読んでいる事前提だが、読んでいても意味が分かるとは限らない
- 滲み出る変態性
を含みます。
そして私は
- 小説・漫画・絵等を書くor描くのが得意ではない*1
- あっぱっぱーだし中華風ファンタジーはもちろん書けん!
- 王の獣は単行本7巻まで持っているが、それ以外は試し読みや読者の感想等で得た知識しかない*2
- 王の獣のキャラが好きだがアンチという矛盾の存在
です。
それでも見たい人は続きへGO! GO!
第十話『弐の春 怒ってないよ』
麗雲の宮からの帰り道。
天耀がチラリと雪を見ると、雪の顔色が悪い事に気が付いた。
「雪、大丈夫かい? 顔色が悪いよ。熱は……ないみたいだけど」
雪のおでこに手を当てて体調を気遣う天耀に、雪は顔を赤らめる。
「大丈夫ですよ、ちょっと……疲れただけです」
「そうかい? でも、そうだな。
今日は特にこれと言って用事もないし、お昼まで休んでいなさい」
そう言われて雪は天耀様の命令ならばと素直に従い、途中で主と別れると自室に向かった。
そして部屋に入るなり靴を脱いでベッドに倒れ込む。
本当に疲れているのだ。体ではなく、心が。
雪はしばらく枕に顔を埋めた後、懐から赤いリボンのついた飾りのない簪を取り出し、眺めた。
寂しい時、不安な時、雪はそれを眺める。
そうすると少しだけ安心できる気がするから。
ふと、雪は簪からリボンを外すと昔の様に右耳の下に結んでみる。
でも手鏡でその姿を確認すると「似合わないや」とすぐに外してしまった。
そして瞼をそっと閉じると、6年前の夏至祭を思い出す。
◇
『6年前・壱の夏~夏至祭~』
蘇月は従獣になった後、皇子と外に出る時に何回か私に会いに来てくれた。
でも、私は蘇月と会えないでいた。
いつも私が用事で妓楼を出ている時に蘇月がやって来て、すぐに帰ってしまっていたから。
仕方ない事だ。蘇月は空いた少しの時間を使って来てくれていたのだから。
でもは私はもどかしさと苛立ちを感じていた。
けど蘇月は決まって知り合いに
「次の参の冬の終わりから壱の春の初めにはまとまって休めるので、その時にゆっくり会おうと藍月に伝えてください」
って伝言を残してくれたから、私はその日を待っていた。
そして夏至祭が始まった。
夏至祭が始まる1か月前には蘇月から手紙で、蘇月が夏至祭で舞台に上がって楽器を演奏する事を知らされていた。
だから夏至祭の日はお祭の会場である宮廷内の外側まで、妓楼のババァや警護達と一緒に行ったのだ。
『何とかして会えないかな? もし会えたら、謝らなくちゃ。あと……』
そんな事を考える私の耳に、楽器の音色が聞こえる。
「おや、もう始まっちまったね。でもこの人だかりじゃぁ前に行くのは無理かねって、待ちな!」
人ごみに入って行きそうな私の襟首をババァが掴む。
「人攫いにでもあったらどうするんだい! ちょっとあんた、肩車してやんな」
警護の背が高い男にババァが命じて私は肩車をしてもらう。
「見えるか?」
「うん!」
私は元気に答えると蘇月を見た。
蘇月は猫っぽい桃色の毛の女の子と一緒に楽器を演奏している。
とてもきれいな音。妓楼でも一番演奏が上手い人みたい。
それに蘇月はとても綺麗な服を着ていて、お姫様みたいだった。
でも……
『リボン、もうしてないんだ……』
蘇月は私とおそろいの赤いリボンを左耳にしていない。代わりに綺麗な髪飾りを付けていた。
もう、区別しなくてもよくなったから?
それともお洒落な服や髪飾りが手に入るから、古くなったリボンはいらなくなっちゃったの?
私の中でだんだんと悲しみが膨れ上がって来る。
「もう大丈夫。下ろしていい……」
私はそう警護の男に声を掛けて下ろしてもらう。
「どうしたんだい? まだ演奏は終わってないよ?」
ババァがそう言うけど、私はもう帰ると言った。
『隣の子が友達なのかな?
友達、本当にできてたんだ。
それに、私は蘇月が居なくて寂しかったのに、蘇月は楽しそう……』
穏やかな顔で楽器を演奏していた蘇月に、私は距離や疎外感を感じ、帰った。
謝る事も、伝える事もせず……。
◇
でも……。
蘇月は僕に見せたくて、一生懸命頑張ってたんだ。
リボンだって外すの嫌がってただなんて、知らなかった。
なのに途中で帰ったりして、ごめん……、ごめん。
悲しくて、布団に潜り込みうずくまる。
そして雪はそのまま眠りに落ちていった……。
◆
昼。
雪の体調がよさそうなら一緒にお昼を食べようとした天耀が太博と共に雪の部屋にやって来て、ドアの所で声を掛けるが返事がない。
「入るよ」
と声を掛けそっと中を覗き込むと、ベッドの布団が膨らんでいる。
二人で近寄ってみると小さな寝息が聞こえる。どうやら雪は布団にくるまり寝ている様だ。
「起こしますか?」
「いや、調子が悪そうだったし今はそっとしておこう」
そう言う天耀はふとベッドの端に転がっている簪に目が留まる。
雪がリボンを結んだ時にそこに置いて、そのままだったのだ。
その簪は天耀の目には中々いい物に見えた。しかし飾りが付いていた痕跡があるのに肝心の飾りがない。
なのでよく見ようと簪に手を伸ばした時、布団から手が伸びて天耀の腕を掴んだ。
「それに触るなっ!」
鬼の形相の雪は簪を奪い取り、そのまま天耀の腕をひねり上げ……。痛みで苦悶の表情を浮かべる主を見て、ヒッと、小さく悲鳴を上げて手を放す。
「雪! 貴様何をしたか分かっているのか!」
太博が怒り天耀の前に立ちふさがり、雪は
「ごめ……ごめんなさい……」
と、か細い声で今にも泣きそうな顔をして、簪を持って裸足で走り去って行った。
一番びっくりしたのは雪だったのだ。
「待つんだ雪!」
叫んだ天耀は雪を追う。
「太博、この事は誰にも言うな! あと雪をイジメるなよ!」と言い残して。
◆
この世界において、亜人は人間の道具という概念で扱われ人間の徹底した管理の元、生かされている。
それは亜人が人間よりも強く、亜人という存在が人間という種にとっての脅威になりえるからだ。
そんな亜人は何か犯罪を犯すと、人間より厳しく罰せられる傾向がある。
亜人が付け上がらないよう、人間の支配下にいつまでも置けるようにする為の線引きとして。
更に亜人にはいくつかの掟があり、その中には『人間に危害を与えてはならない』という物がある。
でもそれには亜人を人間の支配下に置いておく為以外の事情があった。
例えば亜人の子供が人間の子供と喧嘩をしたとして、一対一なら亜人の方に分があるし、手加減をしなければ人間の子供の方が大怪我を負う事もある。
なのでそう決まっている。
もちろん、人間が過度に亜人を傷付ける事も禁止されているのだが。
そんな亜人と人間とのルールがある中、従獣には従獣のある特別な掟があった。
従獣は主に危害を与えてはいけない。
従獣は主を守らねばいけない。
従獣は主の命令に従わねばいけない。
従獣は主を守る為、主より先に死んではいけない。
これが従獣に与えられた掟だ。
それを破る事は許されない。
なのに僕は破ってしまった。
蘇月を探さなくちゃいけないのに。
あんなことをしてしまったら、もうここにはいられない。
最悪僕は殺される。
だから逃げなくちゃ……逃げなくちゃ…………。
自分の犯した最悪な失態に動揺し、雪は逃げていた。
そんな雪の耳に主の声が飛び込んでくる。
「雪! 逃げなくていい! 私はお前を傷付けたり追い出したりはしない!」
天耀のその声に、ハタと足が止まる。
そして振り向くと、体中に葉や花弁や蜘蛛の巣を付けてボロッっとなった上、全速力で走って体力がなくなり酸欠になって陸に打ち上げられた魚みたいな天耀がいた。
「て、天耀様!」
慌てて天耀に駆け付け、倒れた主の上半身を抱きかかえ起き上がらせる。
「天耀様、もしかして僕を追い掛けてきましたか?」
「さすがに普通には追い掛けてないよ。亜人と人間では身体能力に差があるから……逃走ルートを考えて近道をしたんだ」
そう言って追いついてよかったと微笑む天耀に、雪の胸はチクリと痛む。
そもそも、従獣は子供の頃からの憧れだったのだ。
自分にはなれないと諦めて……、こんな形だがなれたのに、主にこんな思いをさせてしまうなんて……。
「ごめんなさい天耀様。僕、死なないのならどんな罰も受けます。だからまだ従獣として傍に居させてくれませんか?
もちろん、こんなお願いおこがましいですが……」
ものすごく反省していますという風に耳を伏せさせた雪を見て、天耀は苦笑いをする。
「少なくとも今いる皇子なら、これくらいなら私以外でも殺さないよ……。
大丈夫。私は罰を与えないし、これからも雪は私の従獣だ。だからそんな泣きそうな顔はするな」
と、雪の頭を撫でた。なのに雪はかぶりを振る。
「駄目です! 天耀様、駄目ですよ! そんなに優しくしたら……。貴方は皇子なんですから、こういう所は引き締めないと!」
雪は亜人と人間との関係性を十分理解している。
更に皇族は民への示しを見せる為にも、そういう事に厳しくしているというのもよく分かっていた。
だから雪は天耀の言動に、嬉しさよりは不安を覚えてしまったのだ。
しかし天耀は「じゃぁ」と雪にデコピンをする。
「確かに身分に応じた対応は大事だな。でも、私は今それをしたくない。
それに父上やお祖父様から言われてきたんだ。
『身分の違いは大切にせねばならない時もあるが、それにこだわって周りを見失わないように』
とか
『亜人と人間との関係性について、通説に惑わされず自分でよく考えなさい』
とね。
そもそも勝手に部屋に入り大事な物を手にしていれば、怒るのは当然ろう。
私にも見られたくない物はあるしね。
だから今回の事は、私と、太博と、雪しか知らないし、三人の秘密にしておこう。ね?」
そう言って、めっちゃ色々付いてる状態で天耀はほとんどの女性が落ちそうな皇族スマイルを雪に向ける。
「天耀様……」
何故か雪の胸が高鳴った。が、すぐさまハッとなり
「お部屋まで運びますね」
と、天耀をお姫様抱っこして部屋まで運んだ。
◆雪と天耀が追いかけっこをしている頃◆
太博は雪がいない隙に彼の部屋を調べようとしていた。
ただその前にと、乱れたベッドを綺麗にしようと布団を持ち上げる。すると赤いリボンが出てきた。
リボンはほつれ色が褪せ、長い月日が経過した事を思わせる。
そして大博は、それに見覚えがあった。
「姉とおそろいなんです。そっくりだから一目で区別ができるように、私が左耳の下に付けて、姉は右耳の下に付けるんです」
そう、あの子は同じリボンをしていたのだ。
夏至祭で晴れ着を着た時も、大人しい子なのにリボンを外すのを嫌がって女官を困らせて、女官から事情を聞いた太博が左手首に巻いてやった。
「やはり、雪は……」
おまけののどケモ『嫌いな物』
雪は酸欠で倒れた天耀をベッドに運ぶと、彼に付いていた色々な物を外す。
その色々な物は季節の花や葉と、蜘蛛の巣が多かった。
「あ、蜘蛛も付いてますよ」
ド派手な色の女郎蜘蛛を背中から外し天耀に見せると、天耀は明らかにビビった。
「……天耀様、もしかして虫はお嫌いですか?」
雪が窓から蜘蛛を逃がし、聞く。
「いや、全部じゃないんだ! ただ、足がいっぱい生えてる虫とか、蜘蛛とかが苦手なだけであって……!」
あぁ。虫は苦手なんだな。
多分カブトムシとかてんとう虫とかは平気だけど、それ以外が駄目なんだろうな。
それと蝶は平気でもミノムシは嫌がりそう……。
と、まるで見たかのように当たっている天耀の特徴を見抜いている中。
「苦手ってだけで、絶対ダメってわけじゃないからな!」
と、天耀は弁解するのであった……。
あと天耀はちゃんと雪の足を綺麗に洗わせて、太博に靴を持って来させていた。
それから。
天耀達は後で、裸足の雪と天耀の追いかけっこは「そういう遊び!」と、見た者達に説明しておいた。
第十話『怒ってないよ』終
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原作の広告(2022/11/24 情報)
Cheese!(チーズ!)
2019年3月号~2023年1月号に王の獣が掲載されている。
2022/11/24時点で電子版で全号購入可能。
割高にはなるが連載中なら最も早く王ケモが見られる。
また、マイクロ&単行本で修正された箇所が電子版でも元の状態で見られると思われるので、単行本とセットで買って変化を楽しみたい人向け。
王の獣~掩蔽のアルカナ~【マイクロ】
49巻まで発売中。
1巻で大体1話分くらいが見られる。(ページ数による)
先行配信をしているサイトもある。
連載中に雑誌より安く、単行本より早く王ケモを見たい人向け。
王の獣~掩蔽のアルカナ~
11巻まで発売中。
1巻に大体4話入ってる。(1話分のページ数による)
時間が掛かってもある程度安くまとめて読みたい人向け。