Dへの扉

謎生物、地球でやりたい事をする

長閑な国の王とケモノ 第二十四話 参の春『仲直り二』

これは『著者:藤間麗 / 出版社:小学館』が権利を有する漫画『王の獣~掩蔽のアルカナ~』の非公式二次創作物です


◆注意する事ばかりで長くなった注意◆

 これは

  • 重度の中二病患者が作った黒歴史濃度の高い「アタイの考えたサイキョーの王ケモ設定!」
  • 原作のネタバレと世界観&キャラ崩壊
  • 女体化
  • 原作を読んでいる事前提だが、読んでいても意味が分かるとは限らない
  • 滲み出る変態性

 を含みます。
 そして私は

  • 小説・漫画・絵等を書くor描くのが得意ではない*1
  • あっぱっぱーだし中華風ファンタジーはもちろん書けん!
  • 王の獣は単行本7巻まで持っているが、それ以外は試し読みや読者の感想等で得た知識しかない*2
  • 王の獣のキャラが好きだがアンチという矛盾の存在

 です。
 それでも見たい人は続きへGO! GO!


第二十四話 参の春『仲直り二』

 子供の頃、平民のふりをして町の子供達と遊んでいた時があった。

 幼い頃。私と姉は母に連れられ*3、母方の祖父の屋敷に遊びに行った。
 そこには沢山の本があり、その本見たさに私達はまた遊びに行きたいと母にねだったのだ。
 しかし母が外出をするのは容易な事ではない。
 だから警護の者達と私達で祖父の元に頻繁に出掛けるようになった。
 そこで私達はたくさんの本を読んで、留学や旅行の経験が豊富な祖父から異国の話を聞いて過ごした。
 ある日。私は一人で警護の者と一緒に祖父の家に来ていた。
 旺眞姉上は体が弱くて私や明鈴姉上と同じように遠く離れた祖父の家に行けない事もあったし、明鈴姉上は私ほど本や祖父の話に興味を示さず飽きてそこまで遊びに行かなくなっていたからだ。
 なので私は書庫で一人本を読んでいた。すると蝶がひらひらと飛んで、私の前を横切る。
 その蝶は青くてとても綺麗で、私は持って帰って母や姉に見せようと蝶を追い掛けたが……。
 蝶は私から必死に逃げ、裏庭に出て生け垣を超えて行ってしまった。
 だから私は生け垣の隙間に顔を突っ込み、外を見たのだ。
 すると私と同い年くらいの人間と亜人の子供が一緒に遊んでいるのが見えた。
『そういえば声が聞こえていたな』
 そう思って眺めていると、その子らが私の追っていた蝶を捉まえて手製の籠に入れたから「あ!」と声が出て、彼らは生け垣から顔を出している私に気が付いた。
「なんだ、お前。この家の子?」
 一人の亜人の少年がそう声を掛け。
「んー。遠い親戚?」
 私はなんとなくぼかして答えてしまう。
 しかし亜人の少年は特に気にせず「ふーん? 所でお前ひまか? ひまなら一緒に遊ぼうぜ!」
 と、手を差し伸べ。私はその手を取った。

 この日、私は帰る時間までその子らと遊んだ。

 次に祖父の家に行く時は、平民に見える服をあらかじめ用意しておいた。
 いつもの服装だと目立ってしまうというのもあるが、服が汚れていて母に何事かと聞かれたからだ。
 もちろん「蝶を裏庭で追い掛け回して汚してしまいました」と嘘を言ったが。
 そして祖父の家に着くと私は一人で書庫に向かって、服を着かえ、裏庭から生け垣を抜けて子供達と遊んだ。

 それから。私は祖父の家に行くたびにそうやって町の子供達と遊んだ。
 姉が一緒の時は外に出られず終わる事もあったが、時に目を盗んで遊びに行くほどそれは私にとって楽しい事であった。

 私に初め話しかけた亜人の少年はヨウジュンと言って、この子供達のリーダー格だ。
 彼は仲間と共に私を色々な所に案内してくれて、草花遊びのやり方やどこでどんな虫が取れるかなど色々な事を教えてくれた。
 それに秘密基地にも案内してくれた。
 あの子らと一緒にいる時は私も自分の事を俺と言って、皇子だなんて肩書は忘れて野山を駆けめぐった。

 しかし、終わりは突然やって来てしまう。
 ある日、いつものように平民のふりをして遊んでいる時、馬車を引く馬が虫に刺されたのだろうか? 急に暴れ、馬車ごと自分の方に突っ込んで来たのだ。
 今、私を守ってくれる者はいない。私はここで死ぬんだ。
 そう覚悟し、目を固く瞑って……衝撃が走る。
 しかし私に痛みはほとんどない。
 ヨウジュンが私を庇って、突き飛ばしてくれたからだ。
 だから私は軽傷で済んだ。
 しかしヨウジュンは……。

「お前、どうせ貴族のボンボンだろ? 見てりゃー分かるって」
 ヘヘッっと笑う少年の片足は、なくなっていた。
「それにお前、ナヨナヨしてるからな。やっぱ俺が守ってやるのが筋だろ」
 ヨウジュンはそう言って私の頭を撫でてくれた。
「ごめんなさい……」
「何で謝るんだよ。お前何も悪い事してねーぞ!」
 ヨウジュンの足は、もう元には戻らない。
 そして、足や腕などが欠損した亜人は『道具』としての価値がなくなるからと、殺されてしまうのがこの国の決まりだ。
 現に私達はヨウジュンに会う前。殺処分が決まったと、医者が彼の両親に話しているのを聞いてしまっていた。
 しかしその話を聞いていた仲間達も、自分の運命を知っているであろうヨウジュンも、私を責める事はしなかった。
 ただ、幾人かはすすり泣いて、残りはグッと泣くのをこらえていたが。
「もう泣くなよ。それよりさ、何か楽しい話しようぜ。そうだ、もうすぐ流星が見られるってよ。願い掛けたら叶えてもらえっかな?」
「俺!」
 私は顔を上げて叫んだ。
「絶対死なせないから! 待ってて、すぐに戻って来るね!」
 私は駆け出した。「まてよ! ここに居ろよ!」というヨウジュンの声も聴かずに。

 祖父の家に帰った私は、祖父や警護の者に事情を全て話した。
 そして皇帝である父の元に急いで帰ってもらう。
 父は仕事をしていたが、突然やって来た私の話を聞いてくれた。
 そして、私を守った亜人の少年が死なないように動いてくれた。
 けれど……。

 遅かった。
 私は名誉ある死を迎えた亜人が眠るこの墓地で、彼と別れを告げた。

 

 私は父を責めた。
 どうして助けてくれなかったのだと、どうして亜人は体に欠損があると殺されてしまうのだと、責め立てた。
 そして父は……私を抱きしめこう言ったのだ。
「これは今はまだどうにもならない事だ。だが、私は変えてゆく努力をしよう。
 だから天耀、お前にも手伝ってほしい。
 そして、この国を……変えてゆきなさい」
 抱きしめられる前に一瞬だけ見えた父の顔は、酷く辛そうだった。

 

 それからも私はしばらく泣いて過ごした。
 痛み止めを使っていたが、それでも足が片方無くなったのだ。きっとあの時痛かったのではないか?
 そして恐らく最後は家族と過ごしたのだろうが、それまでできるだけ長く仲間達と楽しく過ごしたかったのではないか?
 そう思っては毎日泣いていた。
 そんな私に父も母も姉も、麗雲兄上はもちろんいつも意地悪をする江凱兄上まで、気を使ってくれた。

 それは天耀のトラウマだ。
 そしてそれはその後の彼に強く影響を与えた。
 少しでも亜人の手助けがしたくて、蘇月が従獣の面接に来た時に彼女の話を聞いて、全力でサポートしたいと思ったから採用したし、雪の事も大切にしている。
 本来ならば多少なりとも処罰を与えなくてはいけない事も、亜人には絶対にしようとしない。

 だから天耀はそれを、優しさだとは思っていない。
 これは、自分のエゴなのだと。常にそう思いながら、心に棘を刺しながら、それでも亜人との明るい未来を思い描き彼は歩んでいるのだ。

 

第二十四話『仲直り二』終

 

 多分天耀君の警護をしていた者は責任を問われて、ある程度の処罰を受けてると思う。

 

前回

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次回

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 1巻で大体1話分くらいが見られる。(ページ数による)
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 11巻まで発売中。
 1巻に大体4話入ってる。(1話分のページ数による)
 時間が掛かってもある程度安くまとめて読みたい人向け。

 

*1:なお、小説を賞に応募した事もあるが1次審査すら通過した事はなかったし、評価シートありの所では常に構成の評価が最低ランクだった

*2:試し読みや読者の感想等も36話くらいでよく見なくなり、大して分からない

*3:桂花は後宮に入っているが、こちらの世界では書類の提出と警護の人間を何人か付ければ外に出られる