Dへの扉

謎生物、地球でやりたい事をする

EVE#024『サチとの出会い / イツ視点』

注意

  • この物語の元となったのはとある版権物
  • 後に矛盾が生まれる可能性アリ
  • 色々あってこの物語はいらない子となった為、突然終了の予感
  • 私は漫画や小説などを作るのは得意じゃない

 

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 ボクが俺達の元にやって来た年の、梅雨だった。彼女と出会ったのは。

 中学校からの帰り道。雨が降る中俺は傘をさして、ヘッドホンを付けて歩いていた。
 その時、視界の端で植え込みが揺れる。
 思わずヘッドホンを外して耳を澄ます。
 猫がいたら、鳴き声が聞こえるかと思ったのだ。
 だが何も聞こえない。
 俺はそっと植え込みを覗く。するとそこには黒髪の小さなEVEがいた。
 雨に打たれて、傷だらけの体を丸めて横たわっていた。
 その子は、猫の格好をしていた。

 俺は彼女を慌てて抱き抱えると、近くにある大きな病院に走った。

 病院で小さなEVEの検査と治療をしてもらった。
 警察には病院から連絡してもらった。
 その間、俺は親に帰りが遅れている事情を説明しなくてはと、家に電話する。
 電話には母さんが出て、俺の説明を聞いたらこちらに向かうと話してくれた。
 母がやって来て、警察から事情を聞かれ、しばらくすると。
 医者がやって来て、小さなEVEの治療結果の説明をしてくれた。
 小さなEVEは一番ひどい怪我が骨折で、体に付いた無数の傷は時間は掛かるがEVEの回復能力なら痕が残らない程度に治る物だった。
 内臓の損傷もない。
 ただしばらく入院が必要との事だ。
 こうして医者からの説明を聞き終えた俺達は帰った。

「イツ。これからどうするか、イツが好きに決めていいよ。
 イツが何を選んでも、お母さんは協力するから」
 帰り道、母は車を運転しながら助手席に座る俺にそう言った。

 小さなEVEのお見舞いには、毎日行った。
 学校がある日は学校帰りに。
 母も時間を見つけては彼女を見舞っていた。

 彼女は初めこそ口数が少なかったが、段々話すようになっていった。
 いや……。
 会話があまり得意じゃないが自分なりに沢山喋ろうとしている俺を哀れんで、率先して話すようになったのかもしれない。

 そんな中、まずは母が彼女の事情を聞いていた。
 そして家のリビングで俺と二人きりの時、母は俺にも彼女の事情を聞くか尋ねて来たので俺は頷いた。

 

 彼女は5歳の体で生まれた。
 そしてある男の下で何人かのEVE達と暮らし、毎日男達から酷い虐待を受けていた。
 ある日、耐えられなくなった彼女はそこから逃げ。
 俺に発見されたという訳だ。
 既に警察が動いて、残っていたEVEも保護されたそうだが……。

 

「生きていけないかもしれないって」
 そう言って母は目を伏せた。
「あの子も?」
 母は頷く。
「このままだとね」
 そして母はため息をつき
「それでイツ。あの子、このままだとそろそろ治療を打ち切るみたいだから……。早めにどうするか決めておいて」
 母は肩を落としてこの場から去ろうとし。
「……母さん、決めた」

 休日の朝。
 俺と母は車で病院に向かった。
 受付で手続きを済ませて、彼女の待つ病室に向かう。
 彼女は事前に渡しておいた服を身に着け、ベッドの縁にちょこんと座っていた。
 俺は、彼女を自宅に向かい入れる事を決めたのだ。
「お待たせ」
 母が彼女に視線を合わせる様にしゃがんで笑顔を向けると、彼女もはにかんだように微笑む。
「そうだ、新しい名前を決めたの。ね? イツ」
「あぁ」
 小さなEVEはきょとんとしている。
「名前はイツが決めたのよ。ほら、イツが伝えてあげて」
 俺は少し戸惑ってから「サチ……にした」と言った。
 サチは……。
 嬉しそうに微笑んでくれた。
「じゃぁ、行こうか」
 そう言って母は小さなEVEと手を繋いだ。

 それから、サチは母所有のEVEになった。
 サチを迎えるにあたり、御影荘や御影家の共有スペースにある猫系の雑貨などは一旦物置にしまっておく事にした。
 サチの心は癒えていない。だから、なるべく過去を思い出させる物を見せたくなかったのだ。
 俺も、部屋にわりと沢山あった猫グッズを物置にしまった。
「部屋のはいいんじゃない?」
 母が白と黒の招き猫を丁寧に梱包しながらそう言うが、俺は首を横に振る。
 それから、御影家では猫はタブーだ。
 そして俺は、サチが目にする小説、漫画、アニメ、ドラマなどの娯楽類は入念にチェックをし、サチが目にしても大丈夫な物だけを彼女に見せた。
 途中で見れなくなると彼女が悲しむと思い、全部完結済みのを見せている。
 だから俺は少女漫画にも詳しくなった。

 ただ、今でもサチは定期的に病院へ通っている。
 心を見てもらう為に。

 

 俺はサチに出会ってから変わった生活を嫌だと思った事はない。
 そして今の俺にとってサチは、大切な存在だ。
 失いたくない。
 だがそれは、彼女にとって酷な事なのかもしれない。
 俺は未だに、サチの幸せが何なのか……分からない。

+++

「という訳だ。だからイツ様はサチに対して過剰に過保護なんだ」
「ほぉ~う……」
 レンはしばし考え。
「これ、私に話してもよかったヤツ?」
 と、疑いの眼差しをボクに向ける。
「安心しろ。イツ様達にもサチにも、了承を得ている」
「ふ~ん……」
 レンは『ホントか?』と思いつつも、この場でこれ以上追及するのはやめた。

「あの、レンちゃん。サチの事……ボクさんから聞きましたか?」
 学校から帰って来てまだ制服姿のサチがレンの周囲に誰もいないのを確認し、そう尋ねてきた。
「うん。聞いちゃった」
「そうですか……。あの、夕食後にレンちゃんに付き合ってほしい所があるんですけど……」
「……」

 そして夕食後。
 サチは2本の懐中電灯を持って来てレンを御影家の物置前に案内すると、片方の懐中電灯をレンに渡し。
「電気は付けないでください。ここにサチ達が来たと他の皆さんに知られない様にしたいので……」
 と物置の中へ入り、懐中電灯で照らしながら奥に進むとホコリを被るケースの蓋を開けた。
 そこには大量の猫グッズがしまわれている。
 ケースには『イツ私物』とステッカーが貼ってあった。
「これ、イツさんがサチが来る前に部屋に置いていた猫グッズです。イツさんは元々猫が好きだったみたいで……」
 そう言ってサチはしょんぼりする。
 レンはそんなサチの話を聞きながら物置を懐中電灯で照らし、気になる木箱を見つけて蓋を開ける。
「おー、これはジャパニーズ・マネキネコ! しかも白黒」
 レンは梱包材を開いてから感嘆の声を上げた。
 そんなレンに微笑みつつも、サチはイツの私物から黒猫のぬいぐるみを取り出す。
「サチは猫を見ても、もう大丈夫なんです。けど……イツさんが嫌なのかなって思うと、大丈夫だという事を伝えづらくて。
 猫カフェにも行っていないみたいですし」
「ふーん」
 レンはそう言ってから、ハッと気が付く。
「もしかして、私に代わりに言ってほしい?」
「あ、大丈夫です! これはちゃんと自分で伝えたいので……」
 慌てて否定してサチはぬいぐるみに目を落した。
「また、部屋に置いてもらえるといいね」
 そしてぬいぐるみの頭を撫でたのだった。

 サチはイツが大好きだ。
 だから、自分がイツの負担になっていたら嫌だと思っている。
 そして自分は確かにイツに助けてもらったが、だからと言ってその責任を全てイツに背負ってほしくはない。
 もし、自分がイツの負担になるのなら。自分は処分されても構わないと思っている。
 だがきっと、イツも御影家の人達もそれを受け入れる事はないだろうと、それを言ったらとても悲しむだろうとも思っている。
 だからサチは少しでも御影家の役に立ちたいし、イツの支えになりたいと思うのだ。

 


 

補足とか

 ニュースとかは付けてた所が矛盾かな?
 と思いつつも

 サチはもう大丈夫だからBGMにニュースも流れるテレビを付けっぱにしてるのに、サチがしっかり見る感じの娯楽系はイツの過保護が未だに発動して入念チェック。

 って解釈にしておいたわ。
_(:3」∠)_

 

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