注意
- この物語の元となったのはとある版権物
- 後に矛盾が生まれる可能性アリ
- 色々あってこの物語はいらない子となった為、突然終了の予感
- 私は漫画や小説などを作るのは得意じゃない
- これは創作物だ。実在のものとは一切関係ない
前回
「これはまだボクがこの家に来たばかりの頃の写真ね」
そう言いながら詩葉はレンに幼いボクとシンが一緒に映った写真を見せる。
ホーも興味津々という感じでレンの肩に止まって覗き込んだ。
「あー、そう言えばボクって小さい時にこの家に来たっぽいね」
「あら? もうちゃんと聞いてた?」
「サチがこの家に来た年に来たって事は知ってる」
「じゃぁまだ良くは知らないんだ?」
「うん」
特に知りたいとも思わなかったしな。とレンは思いながら頷く。
「ボクはねぇ、子供の頃にご両親が亡くなってしまって、引き取りで揉めて親戚をたらいまわしにされててね。
御影家とは血繋がりもないくらい遠い親戚だったんだけど、子供として引き取って育てる事にしたのよ。
本人の希望で名字はそのままだけどね」
割と重めの話だが、レンは「おー、アイツにそんな過去が」と少し驚いた程度である。
「執事っぽいから、そういう家の出で御影家に子供の頃から出稼ぎに来てたとかだと思ってた」
レンのその言葉に詩葉は笑って「確かにそう見えるわよね~」と言った。
「そうそう。ボクは不愛想に見えるけど、とても優しい子だから嫌いにならないであげてね?」
「んー、頑張る。所で」
レンは写真に目を落す。
「シンの顔が変……っていうか、普通。今はこんなんじゃないのに」
子供の頃のシンは、今の様なポヨポヨした顔をしていない、何と言うか普通の男の子の顔をしていた。
「あー……」
詩葉は困った顔を向け、頬に手をやる。
「シンはね……、ボクがこの家にやって来た年にね、ちょっと事件に巻き込まれちゃってね」
「事件?!」
さすがのレンもびっくりだ。しかしホーは何か考え込んでいる。
「びっくりしちゃうわよね。でも安心して! もう犯人も捕まってるし、解決済みだから! けどね……」
詩葉はシンの、顔が今より何と言うかポヨポヨしていない写真にちょっとだけ申し訳なさそうな顔を向ける。
「その時にね、頭を打って……。思考能力に問題はあまりなさそうなんだけど、顔がね、ちょっとホンワカしちゃったのよねぇ……」
「ほー……」
レンは、そんな事もあるのか……。とシンの写真をまじまじと見つめた。
しばらくしてから、詩葉は気を取り直し写真を切り替えていく。こまごまと説明しながら。
そして。
「あっ、ほら。これはフタが高校の時、劇でお姫様をした時の写真よ! 可愛いでしょ?」
その写真には、美少女と見紛うばかりの眼鏡を取ったお姫様姿のフタが映っていた。
「お~、スゴイ」
そうやって午前中、二人は写真を見て過ごした。
*
お昼。
レン、ホー、武蔵、詩葉の三人と一匹は冷や麦を一緒に啜っていた。
ホーだけは普通の鳥のふりをしているので、切ったそのままの野菜を食べているが。
すると「ほら、コレコレ。夏祭り」と、詩葉は自分のスマホ画面をレンに見せた。
そこには12日と13日に開催する夏祭りの案内が映し出されている。
「夏祭り……」
「色々な出店が出て楽しいよ」
「食べ物売ってる?」
「もちろん! 夜は大きな花火が上がるんだよ」
「おー、あのうるさいの」
そんな会話を聞きながら、ホーは人語を話さず静かに細かく切った野菜をつついていた。
武蔵と詩葉にはレンの事情を話していないし、ホーの事も何も言っていない。
だから『ワシも冷や麦が食べたいんだがな』と思いながらも大人しく野菜をつつく。
「ホー。これ、私の冷や麦食べるかい?」
レンと詩葉が夏祭りの話で盛り上がっている最中、武蔵はヒソヒソ声でそう言うとホーの器にコッソリ冷や麦を少しばかり盛り付けた。
ホーがいいのか? と言いたげな顔を向けると
「いいんだよ。ほら、詩葉に見つかる前に食べてしまいなさい」
と言われ、ホーは遠慮なく冷や麦をすすった。
*
詩葉とレンはその日沢山一緒に過ごし、夕食後。
温泉に一緒に入っていた。
詩葉が二人で入りたいと、レンを誘ったのだ。
そしてのんびりとお湯につかりながら、詩葉は子育ての事を話始めた。
「子供が多いとねぇ、均等に接してあげたいんだけど中々上手く行かなくてねぇ」
そんな言葉を聞いて、レンは詩葉がやって来てからを思い起こす。
詩葉は今日、レンと沢山一緒に過ごしたがレンに付きっ切りという感じでもなく、こまごまとボク含め子供達に均等に接している様に見えた。
ただ、サチにはちょっとだけ接する頻度が多い気がするが、それはサチの過去も関係しているのだろうと思う程度で違和感は特にない。
「そうなの?」
「そうなのよ~。で、ついつい誰かに構っていると他の子をおろそかにしたりでねぇ」
「ふーん」
「シン達の事とか、ね……。もうちょっと私が気を使ってあげていたら、あんな事にはならなかっただろうな~って」
「そっかぁ……」
そう返事を返しながら、子育ては大変なんだなぁと思うレンであった。
*
詩葉達がやって来て三日目の朝食後。
レンは仕事を再開した。
「まだ色々遊びたいのに~」
「あまり連続して休ませるのもな」
名残惜しそうにする詩葉に、イツは窘める様に言う。
そんな中。
「今日はホームセンターに行ってくるよ」
と武蔵はマイペースに買い物の準備を始めていた。
「ホー、一緒に来るかい?」
リビングで退屈気に毛繕いをしていたホーに武蔵が声をかける。
ホーは顔を上げると『いいのか?』と思いながら武蔵を見た。
「いいんだよ。中にまで連れて行けないけど、それでもいいなら」
ホーは喜んで武蔵の肩に止まった。
ホームセンターに付くと、武蔵が「帰る時は呼ぶよ」と行ったのでホーは適度に人と距離を取りパタパタと周囲を巡ったり、木に止まって人々を眺めて楽しんだ。
ただ、なるべく武蔵の姿は視界に入れていた。
そして帰り際は呼ぶと言われたが、こんな所で鳥を相手に大声を出したら人目に付くだろうと、ホーは武蔵が店から出ると尽かさず肩に止まった。
「武蔵さんとホーオー様はすっかり仲良しだな」
家に帰り荷物を置くと、ちょうどアイとサチが一緒に居て声を掛けられる。
「そうだねぇ……。この子はほーおー様って名前なのかい?」
「鳳凰様です。レンちゃん達は略してホーって呼んでますけど」
「そうか、鳳凰か……」
娘二人に囲まれて、武蔵は荷解きをしながらしばし考えると、荷物を持って庭に出て行った。
夕方。
「ほら、ホー用に水浴び場と遊び場を作ったよ」
木陰に丸くくぼんだ石の水浴び場と、ブランコや止まり木などの遊び場が出来上がっていた。
「使い勝手はどうかな?」
そう言われホーはしばらく使い心地を調べる為に水場でバシャバシャやったり、ブランコに乗ってみたりとした後、満足して武蔵の周囲をぐるっと飛んで回る。
「喜んでもらえたようで何よりだよ」
武蔵はそう笑った。
*
「そういえば、レンちゃんってなんだか見た事がある気がするのよね~」
夜、寝る前。
布団に入った詩葉は隣の布団で既に横になり目を瞑る武蔵にそう言った。
「そうなのかい? 少なくとも、私は見た記憶がないよ……」
「確か、昔何かの雑誌で見たような……」
こうして詩葉は暗い室内の中、スヤスヤ眠る武蔵の横で布団に寝そべり昔見た雑誌をスマホで漁って夜更かしをした。
次回