Dへの扉

謎生物、地球でやりたい事をする

EVE#030『ボク』

注意

  • この物語の元となったのはとある版権物
  • 後に矛盾が生まれる可能性アリ
  • 色々あってこの物語はいらない子となった為、突然終了の予感
  • 私は漫画や小説などを作るのは得意じゃない
  • これは創作物だ。実在のものとは一切関係ない

 

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「レンちゃ~ん。今度一緒にプールに行こうか?」
「うん、行く」
 シンは積極的にレンと二人でのお出掛けの約束を取り付け。
 そしてボクは遠巻きにその光景を見ている事が多くなった。
「嫉妬するねぇ?」
 フタがそんなボクに対し、茶化すように話し掛けるが。
「別に、そんな事はありませんよ」
 と涼しい顔だ。
「そうなの?」
 フタは意外そうな顔をしてから少し考え。
「でも、ボクってずーっとシンに付きっ切りだったし、ここらでちょっと距離を取るのもいいかもね」
「距離ですか」
 ボクは少し考えながら答える。
「うん。シンもあんな感じだけどしっかりはしてるし、子離れする頃だと思うんだよね~」
 そんなフタの言葉に「考えておきます」とだけ答えてボクはフタから離れた。

『そう言えば、レンが来るまでずっとシン様と一緒だったな』
 フタから離れたボクは、ふとそう思い返す。
『正確には、あの日から……』

+++

 私はそこそこ名の知れた、とある家庭に生まれた。
 母は私を身ごもると、私より数歳だけ年齢の高いEVEを私の姉として、そしてお手伝いをしてくれる道具として購入した。
 名前はトモ。大人しく、笑顔の可愛い子だ。
 私は初め姉としてトモに接し、良く懐いていた。
 教育に厳しく、将来も自分で決めさせてくれない様な両親だったが、トモはいつも私に優しく接してくれたし味方でいてくれた。
 ただ、その関係性は段々と形を変えていく。
 両親の言いなりになりまるで人形の様な彼女が、自分の意思という物を持たない彼女が、親に敷かれたレールを歩き続ける自分を客観的に見ているようで嫌悪感を抱くようになったのだ。
 更に無条件に私に優しいEVEとしての性質も気持ち悪いと感じ、私は徐々に彼女を避け始めた。

 ある日。
 トモは転びそうになった私を庇い、怪我をした。
 大した怪我ではない。ただの擦り傷だ。
 だが、この時私の中で我慢していた感情が弾けた。
「庇ってなんて言ってない、EVEなんて気持ち悪い!」
 気が付いたら、大丈夫かと私を心配するトモにそう投げかけてしまっていた。
 それからトモは私の気持ちを察してか、距離を置く私にあまり接さない様にになり。
 それから1年足らず。
 仕事で出掛けていた両親が事故に遭い死に。
 親族が色々と揉めたり私をどうするかで言い争っている内に、トモは中古としてメーカーに売却された。
「また会おうね」
 別れの時にトモはそう笑って去って行った。

 私と言えば親戚の家をたらい回しにされ、居場所もなく、毎日辛い思いをしていた。
 そんな中で私はトモの笑顔を思い出しては、会いたいと願うようになった。
 あんなに拒絶していたのに。

 11歳になる年の初め。私は御影家にやって来た。
 一人で過ごそうとしている私に、御影家の人々は家族の様に優しくしてくれた。
 正確には、私の本当の両親より優しかった。
 教育は特に厳しくないし、学校のテストでいい点が取れれば百点でなくったって褒めてくれる。
 そしてシン様にいたっては1個上の私をよく気にかけ、積極的に話し掛けてくれたし。
「僕ね、探し物を見つけるのが得意だよ!」
 と、能力の事もあっさり話してくれた。

 梅雨が明けた頃。
 御影家にEVEの少女がやって来た。
 サチだ。
 私は訳ありの彼女の境遇を、偶然武蔵様と詩葉様が話しているのを聞いていたので知っていた。
 そしてサチを見ていたら、トモの事がとても心配になったのだ。
 だから私は夏休みに入ってすぐに武蔵様達ではなく、シン様に写真と共にトモの存在を打ち明けて探してほしいと頼んでしまった。
 シン様は早速探してくれた。
 運が悪い事に、その場所は子供でも電車を使っていける場所にあった。

 私達はトモ探しを他の人間に話す事もないまま電車に乗り、歩いてとあるビルの中に入っていった。
 そして……。

 シン様は背後から棒で殴られて頭から血を流し倒れ、私は何人かのガラの悪い男達に囲まれた。
 私は必死でトモを探しにここまで来た事、ここでの事は誰にも話さない事、私達を助けてほしいと訴えた。
 それを聞いた男達は下卑た顔で私にある映像を見せてきた。
 トモに会わせてやると。

 映像の中の彼女はボロボロだった。
 そんな彼女の唇がかすかに動く。
『ごめんね、ボク。約束が守れなくて……』
 そして彼女は動かなくなった。

 確かにトモはここに居た。
 だが、私達が来た時にはすでに……。
 私が感じた嫌な予感は当たっていたのだ。

 私は頭が真っ白になり、気が付いたら……赤い瞳をした黒髪の女性が立っていた。
 そして男達を刀で切りつけていく。
 不思議な事に、倒れて行く男達の体から血は流れない。

 残り一人になった時、私は彼女を止めた。
 最後は私にやらせてほしいと。
 彼女はしばし私を見つめ。
 私の後ろに立ち、私の手に刀を握らせると手を添え――。

 男達は全て倒れた。
 それを見届け、スマホでどこかに電話をした後、立ち去ろうとする彼女の手を私は引く。
 そして願ったのだ。
 私にも貴女の様な力が欲しいと。手ほどきをしてほしいと……。
 彼女はしばらく考えて。
「じゃぁ、私の力を半分あげる」
 と、私のおでこにキスをした。
 私の中に何かが流れて、ふと彼女の瞳を見ると、赤かった瞳は黒くなっていた。

 それから、私と彼女・毬華の交流が始まった。

 その後は毬華が呼んでくれた救急車が来て、私とシン様は病院に運ばれ。
 救急隊員が呼んだ警察によりあのビルで行われた悪事は暴かれ、トモも回収された。
 そして武蔵様と詩葉様は、御影家の墓にトモを入れてくれた。

 シン様は血が結構出ていて貧血になっていたが、奇跡的に傷は深くなかった。
 ただ、病院で目が覚めたシン様は今の様なポヤポヨとしたア……。
 ホンワカした顔になっていたが。

 すべて私の責任だ。
 だから御影家にいる間は、シン様に誠心誠意尽くさねばならない。


 俺は人間の玩具のEVEが大嫌いだ。
 だけどそれより嫌いなのは、彼女らをどんな風に扱っても大した罪にならないと、自分の快楽の為に扱う人間だ。

+++

「そういえば、シン様からの誕生日プレゼントが初めて食べ物だったな」
 シンからのプレゼントを皆に分け与えたのも初めてだ。
 そしてボクはフタの言葉を思い出す。
「子離れか……」
 ボクはしばし考えると、息を吐いた。
「ま、シン様だけではなく、私はいつかは御影家からも距離を置く事にしようとは思っていますけどね……」

 

***

 

 8月の終わり、レンのスマホが震えた。
 父からメッセージが届いたのだ。

遅くなったけど、ハッピーバースディ・レン
これは私からのプレゼントだよ

 という文字から始まるメッセージには、ファイルが付属されていた。
 レンが開いてみると、自動で何かをインストールし始める。
「お? 変なアプリじゃないだろうな……」
 レンはやや警戒し、メッセージの続きを読む。

このアプリはアッシュに作ってもらった物なんだけど
やっと安定して使えるようになったからレンにあげる事にしたんだ
機会があったら使ってみてくれ
じゃぁ元気でな、レン

父より

 レンはインストールし終えたアプリのアイコンをタップし、取説を読み始めた。

 


 

補足

 ボクの家系は執事とかボディーガードとかで、金持ちとか政治家とかを代々守って来たとかなんかそんなのを想像してる。

 ボクの心の一人称の話だが。
 誰かと話す時も心の中も『私』にした後、毬華の前では一人称を『俺』にするかー。
 とかして矛盾したが、まぁ心の一人称もなんか一緒にいる人とかくつろぎモードとか、なんかそんな感じで変わるって事にしておいてくれ。

 

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