注意
- この物語の元となったのはとある版権物
- 後に矛盾が生まれる可能性アリ
- 色々あってこの物語はいらない子となった為、突然終了の予感
- 私は漫画や小説などを作るのは得意じゃない
- これは創作物だ。実在のものとは一切関係ない
前回
御影荘勤務中のアイが廊下を歩いていると。
「……」
強い視線を感じた。
少し前からずっとこの調子である。
「あー……」
アイは困った顔で足を止めてクルっと振り向くと。
「レン、何か用か……?」
と声を掛ける。
すると襖の向こうに隠れていたレンが顔を出した。
「うん」
「何だ? こんなコソコソと……」
「大事な話がしたい。出来たら二人きりで」
そう言うレンから何となく、ただならぬ気配を感じたアイは
「……分かった。じゃぁ今夜アタシの部屋に来いよ」
と誘い。
夜。
「で、大事な話ってなんだ?」
ローテーブルをはさむように二人は座り、ベビードール系のセクシーな部屋着のアイがそう切り出し、怪獣の着ぐるみの様なパーカーのパジャマを着たレンは真剣な顔で口を開いた。
「アイってさ、EVEのチップの事、どう思う?」
「何だ? 突然……」
アイはびっくりして聞き返すと、レンは珍しく困った顔をして「う~む……」と唸りだした。
それを見て、レンには何か考えでもあるのだろうとアイは考え。
「そうだな……。EVEとしては必要な物なんだろうな」
と当たり障りない返事をした。
しかしレンはそれでもなお唸り続け。
「アイは、フタの事好きだよね?」
と、聞いてきた。
「え?! あぁ、好きだけど……」
突然の質問にアイは恥ずかしさから目線を外す。
「それって、どういう好き?」
「え~……。えっと、そりゃ恋愛感情の好きだよ」
レンから恋バナを持ちかけられている?! 一体どういう風の吹き回しだ……。
などとアイが考えていると、レンは再び質問をして来た。
「じゃあさ、フタと恋人になりたい?」
その言葉に、アイは「え?」と一瞬固まり。
すぐに悲し気に顔を伏せる。
「そうだな。アタシはフタの恋人に戻りたい。でも、それは多分ムリだ」
「そうなの?」
「あぁ。今のアタシじゃな」
そう言ってアイは立ち上がるとベッドに寝ころび、手招きをしてレンを横に誘う。
レンが隣でごろりと横になり、そろって天井を見ているのを確認すると
「少し昔の話をするぞ。アタシが、この家に来た頃の話だ……」
と、アイは昔の話を始めた。
+++
EVEは赤ん坊から成人まで、あらゆる年齢の個体が販売されているが、例えば20歳のEVEを注文したとしても、20年待つなんて事はない。
科学が発達したこの世界では、EVEを注文して1カ月程度で購入者の希望通りの外見と年齢で生み出す事が可能だし、希望があればその間に希望通りの知識を入れる事も可能だ。
なのでアイは御影家の家事手伝いや御影荘の手伝いなどできるよう、知識を入れてからやって来た。
しかし、知識だけでは体が追いつかない事もままある。
だからアイは最初、知識では分かっているオムライスがうまく作れなかったし、掃除などもたどたどしかった。
もちろん、ある程度はできていたが。
それでも初めて作ったオムライスが、うまく作れなかったのはショックだった。
けどそんなアイに「練習すればすぐに上手に作れるようになるよ」とフタは声を掛け、一緒に料理や家事、仕事など色々な事を共にしてくれた。
上手く出来る様になったら、褒めてくれた。
だからアイはフタが大好きだ。
やがて、アイとフタは付き合うようになり、最初は順調に交際をしていた。
しかし……。
しばらくして、フタはアイに触れてこなくなった。
目をそらされる事が多くなった。
段々、避けられる様になっていった。
アイはその事が悲しくて、何度も強すぎる『悲しい』をチップが押さえるようになった。
+++
「何でだろうって最初は思ってたけど、ある日さ。
フタが「もっと他の人と恋愛をしてみたら? 僕以外にだって良い人はいるよ」って言い出して、アタシが困ってたら「アイは僕所有のEVEで、チップがあるから僕を好きになったんだと思うから」って言ってきて……」
アイはそう言ってため息をこぼす。
「あぁ、それでかぁ。って思った。
それに、フタはそれ以外にも負い目みたいな……。アタシを束縛してるとか、そういった事を考えてるのかなって。
アタシもさ、アタシはフタ所有のEVEだから、チップがあるから、特に『好き』って気持ちが湧きやすいのかなって思う時はあるけど……。
それでもアタシがフタを好きなのは変わらないんだけどな」
そう、アイはしばらくぼんやりと天井を見つめた。
「前、EVEのチップが壊れた事件があったじゃん?
あのニュース見てさ、アタシもチップが壊れたらフタが前みたいに接してくれるのかなって……、そう思ってた。言えなかったけどさ」
レンはそう、悲しげに笑うアイの姿をしばし見て。
唐突に起き上がると
「ねぇアイ。チップ、壊そうか?」
と尋ねた。
「え?」
アイは何を言われているのかが分からず、レンの顔を見つめる。
「あのね、私のスマホに今、チップぶっ壊しアプリがあるんだけど」
「チップぶっ壊し?! ちょっと待てレン、どういう事だ?」
アイは起き上がると慌ててレンの話を遮る。
「う~ん……」
レンはどう説明した物かと考え。
「私が元居た場所にいた人から、誕生日プレゼントに貰った物。
件のEVEのチップが沢山壊れた事件で使われた装置の進化版だって」
割と平然とそんな話をし出すレンにアイは驚き、『レンはあの事件を起こした人達と関りがある……?』と考えつつ
「レン、この話は無暗にするなよ?」
と注意をし、レンも「分かってるよ」と頷いた。
「それで、どうする?
安全性は多分大丈夫だと思う。でも絶対はないと思うから」
アイはその言葉に、しばらく考えた。
そして。
「アタシ……」
*
「フタ。話がある」
お昼過ぎ。アイはフタを呼び出すと、御影荘の人気がない裏庭で話を始める。
「あのさ……。突然な話なんだけど、EVEのチップがあるじゃん? 少し前に外国でそのチップが無効化された話があっただろ?」
「あぁ、あったね」
「でさ、なんかそれがアタシにも使えるらしいんだよね」
「え?! それどういう事?」
フタは意味が分からず、慌ててアイに問い詰める。
「あぁ、話をして来たのはレンだよ。アタシは詳しく聞かなかったけど、レンのスマホに対象にしたEVEのチップを壊すアプリが入ってるんだって。
……色々思う所はあると思うけど、あのさ……」
「レンちゃんを問い詰めたり警察に突き出したりとかはしないから大丈夫」
フタは頭を押さえつつ答える。
いったいあの子は本当に何者なのだと考えながら。
「それで、アタシさ。そのアプリを使ってチップを壊そうと思うんだ」
「え?」
「あ、あとアプリは個人に使う物で周囲には影響がないって言ってたけど、不安だからサチが学校に行っている間に使おうって話もしたぞ?
……フタが駄目だって言うならやめる。けどアタシ、チップを無くして少しでも人間に近付きたいんだ」
「アイ……。でも、失敗とかは大丈夫なのかい?」
チップは脳内にある。だからフタは万が一が起きた場合を心配していた。
「多分安全。でも絶対はないと思ってる。
けど、アタシはどうしてもやりたいんだ」
アイは真っすぐフタを見つめ、フタはその視線を受け止めると。
「分かったよ。アイの好きにしたらいい」
『それに、ここでアイの考えを否定したら、僕が嫌がって避けてた事をする事になるし』
と、笑顔を向けた。
*
フタがソワソワとアイが戻って来るのを待っている。
そこにアイがコソコソとやって来て。
「だ~れだ!」
後ろから手でフタの目を隠してそう話しかけた。
「アイ!」
フタが振り向く。アイは笑顔で立っていた。
「アイ! 体は大丈夫? 痛い所とかない?」
「今の所、体は大丈夫。ただ、なんか落ち着かないかも。今までとちょっと違うから……」
アイは困ったように笑った。
「なんかさ、今まで言えなかった事、沢山言いたい気分!
それと、フタの事すごくからかいたい」
そう言って意地悪な笑顔でフタのほっぺを軽くつまんだ。
「え? そうなの?」
フタは困り顔で笑う。
「でさ、アタシはもうチップは機能してないワケだけど……。
アタシ、フタが好きなんだよね。だから付き合ってくれる? もちろん恋人としてな。
でも、アタシはチップが機能してなくてもEVEだし、フタが嫌なら諦める」
そう言うアイは清々しい顔をしている。
そんなアイの顔をフタはしばらく見つめ。
「喜んで。今まで、変に距離を取ってごめん」
と、アイに抱き着いた。
*
翌朝。
「なんだか、フタ兄様とアイちゃんの仲がいいね~」
「そうだね」
「それに、ウピウピしてるよ」
「そうだね」
シンと一緒に朝食の片付けをしていたレンがいつも通りに返事を返す。
「あんな二人を見たの、いつぶりだろう?」
シンはそう言い、「突然、何かあったのかな?」と言いつつも仲が戻った二人をほほえまし気に見ていた。
なお、しばらくしてちゃんと御影家内でレンのアプリでアイのチップがぶっ壊されたという共有はされたし、イツが心配でレンに
「間違ってでもサチのチップは壊すなよ?」と言い
「大丈夫だよ」と冷静に返されていた。
レンが着ているパジャマは私の好みにより
「トイレに行きづらいだろう!」
と言いたくなる上下が繋がったタイプではなく、上下に分かれてる物だ。
次回