注意
- この物語はとある版権物の影響で制作されている
- 純粋な漫画でも小説でもない
- 矛盾が生まれる可能性アリ
- 私は小説や漫画等を描くのが得意ではない
前回
仲良くなってきた
「陰、これは何だ?」
陰が手にしていた大きな紙がチラリと見えたので、フレイが彼女の背後から身を乗り出して覗き込む。
「これはこの図書館の地図です! 広くてなかなか覚えられないからここに来た頃に描いて使っていたんですよ」
陰は何やら自慢げにそう言うが、カラフルなマーカーで描かれたイラスト入りの図書館の地図は、何というか……。
「そうか、なかなかよく描けてるな。子供の手作り感があって趣きがある」
「……。フレイさん、それって褒めてますか? それとも貶してます?」
陰は口を尖らせた。
そこに暝玉がやって来て、「二人とも何してるんだ?」と、陰の手作り地図を覗き込んだ。
「何だ? これは。子供が描いたここの地図か?」
暝玉のその言葉に、陰はショボっと耳を伏せさせた。
◆
「中々いい出来じゃないか」
事情を聞いた後、暝玉はそう言いながらも肩を震わせ笑うのを我慢していた。
「いいですよ別に、気を遣わなくても」
陰は口を尖らせて地図を畳む。
最近、暝玉との距離が縮んでこうして会話する事が増えた。
「そういえば陰、ここには慣れたか?」
「はい! もう地図がなくても大丈夫ですし、洋部屋にも慣れました」
『陰は洋部屋に親しんでない暮しをしていたのか……?』
暝玉が相変わらず疑問を口に出さずにいたら「陰はこういった場所にはあまりいなかったのか?」とフレイが聞く。
「はい。僕が住んでいたのは田舎で、ずっと和室で過ごしていました。だからお部屋をもらった時、凄く新鮮でしたよ」
そう言って陰は尻尾を一回振る。
実は洋部屋に憧れていたのだ。
更に、本当は可愛い部屋にしたいのだが……。
それは男のふりをしているから出来ないというのは、秘密にしておいた。
フレイ
食事の準備中。
陰は隣でエプロンを着てスープの味見をするフレイに
「フレイさんって、この星の人ですか?」
と聞いてみた。
というのも、この星はどちらかと言うと和風っぽかったり中華っぽかったりアジアっぽかったりする星だ。
そんな中、フレイは名前的にも普段来ている服的にも西洋っぽさがあるので何気なく聞いてみたのだが。
「違うな。つまり、俺は別にこの国で西洋かぶれを気取っている訳ではなく、なじみのある服装をしているだけだ」
「別に西洋かぶれとかそういう風に思ってませんけど……。洋風な文化もありますし」
旧図書館がそうである。
陰達が今暮らすこの凪の国は、どちらかと言うと和風な街並みや調度品、服装が多い。
だが旧図書館は洋風な外観だし中も洋風な調度品にあふれている。
ただフレイはどちらかと言うとユニクロファッションなので、和装が進化したような服装が好まれるこの国の中では浮いていたが。
「じゃぁ、フレイさんはお仕事の都合とかでこの星に来たんですか?」
話を戻して陰が微妙に気になっていた事を聞くと、フレイはオタマでスープをゆっくりかき回しながら
「いや、五年ほど前に住んでいた国の王女に手を出したら国王がキレてな、星渡り*1で適当な場所に転送されたら暝玉にばったり会って、それから世話になってる」
と言い、鍋の火を止めた。
「はぁ……。
え? 手を出した……?」
陰は疑問に思う部分もあったが、これ以上は聞かないでおいた。
◆
フレイの衝撃発言の翌日。
「そういえば、フレイさんって彼女がいるんですね」
暝玉の部屋を掃除中。陰は朝帰りのフレイから女性物の香水の香りがした事を思い出し、暝玉に何気なくそう尋ねてみた。
が。
「いや、いないぞ?」
「え? でも女の人の香水の匂いが……」
「あぁ、あれはどちらかというと友達じゃないか?」
その後。
陰は暝玉から、フレイが特定の彼女を持たない人だと教わった。
◆
『フレイさんはそういう人なんだなぁ……』
暝玉からの説明で、フレイの人となりが粗方分かった後。
「そういえばフレイさん、元居た国で王女様に手を出してこの星に飛ばされてきたって言ってましたけど……」
王女様の事も恋人ではなく友達として手を出したのかー。などと陰は考える。
「あぁ、あれか。あの時は俺の部屋の中に突然現れて、ビビった」
「星渡りって適当に使うと変な所にも飛んでしまうんですよね? 溶岩とか雪山じゃなくて良かったです」
陰はまるで自分の事の様にホッとする。
「まあな。ただその後、アイツは身一つでやって来て職もないからって俺の世話係りとして居座り始めたけどな。まぁ、役に立ってるが」
その言葉に陰は苦笑いをした。
「それから、一応伝えておくが。フレイが王女に手を出したっていうのは嘘だぞ」
「嘘なんですか?」
そう陰がびっくりして聞き返すと、暝玉はああと頷く。
「あいつがいた国の王女にはな、好きな男がいて、でも国王から好きでもない男との結婚を決められてしまってどうにかしたくて、フレイに相談して傷物だって事にしてもらったそうだ」
更にこれは、暝玉独自に調べて分かった事だと付け加えた。
「フレイさんってやっぱいい人ですね」
「まあな。だが不特定多数の女と遊んでいる事に変わりはないがな」
◆
陰がフレイの事情も分かった後。
陰とフレイは買い物をした後、荷物を持って帰り道を歩いていた。
「荷物、もう少し持つぞ」
陰の方が多く荷物を持って行ってしまったので、フレイが声を掛ける。
しかし妖魔である陰は人間より力持ちだ。だから筋力はフレイ程度にはある。
なので「このくらいなら大丈夫ですよ」と笑顔を返した。
「だが、お前は女の子だからな。ここは男の見栄を張らせてくれ」
「……。じゃぁ、お願いします」
『フレイさん、やっぱかっこいいな。女性との付き合い方が特殊だけど』
陰はそう思いつつも、特に恋愛感情は湧かないままフレイの横顔を見る。
それから、しばし考えて。
「あのぉ……。私、フレイさんが特定の彼女とか作らないって知ったんですけど……」
「暝玉経緯か?」
「はい……」
「フッ……。とうとう陰も俺の秘密を知ってしまったか」
『秘密っていうほど秘密でもなさそうだけど……』
などと思いながら「そうですね」と適当に相づちを返しつつ。
「それで、フレイさんってちゃんとしたお付き合いとか結婚とかはしないんですか?」
と聞いてみる。
「する予定はないな。
俺と真面目な付き合いや結婚をしたいと思う女がいたとして、俺がその女と関わると相手を不幸にするからな。俺は色んな女を広く浅く愛したいんだ」
「はぁ……」
フレイはカッコいいが、やっぱり恋愛感は特殊だな。と、陰は思うのであった。
次回
まとめ
*1:別の惑星に行く為の魔法