獣神恋々奇譚*25ページ目『森へ木の実探し』『陰の耳と尻尾が消えた』

注意

  • この物語はとある版権物の影響で制作されている
  • 純粋な漫画でも小説でもない
  • 矛盾が生まれる可能性アリ
  • 私は小説や漫画等を描くのが得意ではない

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森へ木の実探し

 実りの秋。
 鬱蒼と木が生い茂る屋敷の裏の森に様々な木の実がなっていると聞いた陰は、早速集めに行こうと籠を背負ってフレイと共に出掛け。
「えい!」
 陰は尻尾に飛びつこうとした小さなネズミサイズの小鬼を、棒で小突いて消滅させた。
「ここって大きい鬼はいないけど、小さい鬼が多いですね」
「大物は俺が定期的に倒しているからな。ただ、小物は手付かずなんだ。暝玉も何もしようとしない」
「あー、そう言えば暝玉様って鬼退治できていましたね」
 無人島に行った時、暝玉は陰やフレイに頼らず術で鬼を退治していた。
「うむ。ヤツは体力がないからな。わざわざここに来て鬼を倒して回る事はしないが。
 所で陰、お前鬼避けスプレーはしていないのか?」
 鬼避けスプレーとは、虫よけスプレーの鬼バージョンである。
 大物にはあまり効果は無いが、小物はこのスプレーを体に掛ければ近寄って来なくなる。
 ちなみに虫除けとセットで効果がある物や、日焼け止めにそういった効果がある物も売られている。
「鬼避けスプレーはちょっと高いので……」
「俺のを掛けてやればよかったな」
 普段、こういった場所でこざかしいプチ鬼を寄せ付けない為に鬼避けスプレーを愛用しているフレイが申し訳なさそうに言う。
「部屋で使ってきたから持ってきていないんだ。いったん帰るか?」
「大丈夫ですよ、これくらい」
 陰はそう言って先に進もうとするが。
「いや、まて」
 そう言ってフレイは陰の隣に立って肩に手を回す。
「こうしていればあまり来ないと思う」
「そうですね」
 そう言って陰はアハハと笑った。
 もちろん心の中でいかがなものかと思ったのだが、陰的にはフレイは性の対象になっておらず、そのお陰か否かこの程度の事なら動きずらいと感じても嫌ではない。
 そしてフレイの方も陰が自分を性の対象として見ていない事が分かっており尚且つ、自分も陰には性的な好意を寄せる事がないので
『まぁ、いいか』
 程度の気持ちにしかならないのだ。
 つまりお互い年の離れた兄妹の様にしか思っていない。
 ただ陰は、『今度から鬼避けスプレー買おうかな? でも時間を見て小鬼退治した方が経済的かな』とは考えていたが。

「おい暝玉。俺は今日陰の肩を抱いて歩いたが、お前の方はどこまで進んだ?」
 暝玉が食後のデザートの木の実入りバターケーキを食べている時にフレイがそんな事を言うので、危うく口の中の物を吹き出しそうになり。
 無事飲み込んだ後「お前いきなり何を言うんだ!」と怒鳴った。
 ちなみに陰も食事の席に居たのだが、今は一足先に食器を片付けている所だ。
「羨むかなと思ってな」
 そう言ってフレイは軽く微笑むが。
「羨ましくなんか……、いや、あぅ……」
 暝玉が返事に悩んでいるのを見て、驚いた。
「ほぉう……」
 しばらくおかしな挙動でうろたえる暝玉を見た後。
「まぁ、肩を組んだのは小鬼避けの為だ。陰は鬼避けスプレーを持ってなくてな。俺は付けていたから体を密着させてみたんだ。結果、効果があってめでたしというワケだ」
「めでたくない!」
「そうか? まぁ、陰に良い所を見せたいなら、鬼避けスプレーでも買ってやるか、裏の森の小鬼退治でもするんだな」
 と言ってフレイは去ろうとし。
「そうだ。陰はあまり強い香りが好きではないぞ。だから無香料タイプや微香タイプがお勧めだ」
 と付け足して、ようやっと暝玉の前から消えた。

 次の日の朝。暝玉は薬局に行って無香料タイプの鬼と虫除けセットのスプレーを買い、その後裏の森に入って小さな鬼の退治をした。

「暝玉様は鬼退治ですか……」
「ああ、今日は雨が降るな」
「雪だと楽しいです!」
 そう笑顔で言った後。
「でも、一人で大丈夫でしょうか?」
 陰は暝玉の主に体力などを心配したが、「あいつも子供じゃないからな。無茶はしないだろう」とフレイは特に気に留める様子は見せず。
 そしてそんな会話をされているとは知らない暝玉は、せっせと小鬼を退治して。
 お昼前にちゃんと帰って来たが、ヘロヘロに疲れ果てていた。

 陰が掃除や食事の準備で旧図書館内を行き来し。
 午後になって自室に戻った時だった。
「あれ?」
 陰の部屋の前に、近所の薬局の紙袋に入った何かが置かれていたのだ。
 手に取ると『陰にやる』と暝玉のメッセージが添えられており、中を見ると鬼と虫除け兼用タイプのスプレーが入っていた。
「……フレイさんから聞いたのかなぁ?」
 陰は喜んでスプレーを受け取り。

 翌日。
「うぅ……。あちこちが痛い……」
 暝玉は筋肉痛になった。
 だから朝から部屋のベッドの上で過ごしていた。が、もちろん本は読んでいる。
「暝玉様ってば、普段動かないのにいきなり沢山動くから……」
「すぐに治る!」
 彼は妖力が高い。
 そのお陰で寿命も長いし多少無茶な食事をしても体を壊さない。
 そして、回復も比較的早い。
 この程度の筋肉痛なら、昼過ぎには治るのだ。
 そんな暝玉に陰は飽きれた視線を向け。
 そして微笑んだ。
「今日はゆっくりしていてくださいね。……それから」
 暝玉が陰の方を見る。すると陰は「鬼避けのスプレーありがとうございます」と、嬉しそうに尻尾をゆらりと揺らすので、暝玉は恥ずかしくなって視線をそらした。
「使い心地がいいなら、また買ってやる」
「えぇ?! 大丈夫ですよ~」
 陰は手と顔を横に振るが「いや買う」と暝玉が譲らないので買ってもらう事にした。
「でも、そうですねぇ……そうだ! 今度裏の森にピクニックに行きませんか?
 私がお弁当を作るので。スプレーのお礼です」
「二人でか?!」
「え? あー、そうですねぇ。特に考えてなかったんですがフレイさんは……」
 すると突然ドアが少し開きフレイが顔を覗かせ「俺は行かないから、二人で行ってきてくれ」と答えてどこかへ行った。
「じゃぁ、二人で行きましょう」
「お……おう!」

 こうして。
 なんやかんやで暝玉は、陰とのデートを取り付け。

「暝玉様が小鬼退治してくれたお陰で、鬼の気配は一切しませんね。スプレー、無駄遣いしちゃったかもです」
 陰は嬉しそうにお弁当を持って尻尾を揺らし森を歩き。
「無駄遣いとか言わずにたっぷり使ってくれ」と、暝玉は陰の後ろを歩いて尻尾や耳を観察していた。
 ちなみにレジャーシートやおしぼりなどは、陰に全部持たせるのはどうかと思った暝玉が持っている。
 こうして二人がしばらく歩くと、開けた場所に出た。
「ここですよ、木の実探しで見つけたいい場所!」
 こうして、ここでシートを広げてお昼ご飯を食べたのだった。


陰の耳と尻尾が消えた

 陰は暝玉からの熱い視線を割と感じていた。
 ただ。
『暝玉様って、私……じゃなくて、私の尻尾や耳を見ているよなぁ……』
 そう思って耳をピコピコ動かし、尻尾をゆらりと揺らす。
『モフモフしたのが好きだし、仕方がないけど……』
 そう思いつつ自分の尻尾を手で手前に持ってきて眺めながら、陰は少し不機嫌な気持ちになった。

 そして翌日。

「暝玉様、おはようございます」
 暝玉の部屋に朝食を運びに来た陰がそう声をかけ「おはよう」と暝玉も本から顔を上げて挨拶をし返し……。
「うおおおおおおお!!!!!!?????? 陰!」
 と、持っていた本を放り上げ椅子から立ち上がると陰の肩を掴んだ。
「お前、耳と尻尾はどうした!?」
 暝玉が驚くのも無理はない。この日の陰にはケモ耳と尻尾が無かったのだ。
「耳ならありますよ?」
 暝玉の剣幕に気圧されつつも、陰は髪を少し避けて人間の耳を見せる。
「尻尾はありませんけど」
「どどどどどどどうしたんだ? 何かの病気か?!」
 暝玉はなおも動揺している。
「違いますよ~。これは変化です」
「あぁ、変化か」
 妖魔は変化で人間にも化けられる。
 その事は暝玉もちゃんと知っているのだ。
 だから彼は落ち着きを取り戻し、落ちた本を拾って席に着いた。
「ちょっとイメチェンしてみたくて」
「でも1時間くらいで元に戻るんだろ?」
 陰は変化が得意ではない。だから完全獣化はチビケモにしかなれないし、1時間で元に戻る。
 しかし。
「私、こっちの変化は相性がいいみたいで、12時間は持つんですよ~」

 こうして、陰は人間の姿で過ごした。
 ただ……。

「おお、このおかずはおいしいな!」
 とお昼ご飯を食べ。
「陰。お勧めの本があるが見るか?」
 昼過ぎに本を勧められと、あまり変化がない。
『尻尾や耳を見る様な事はないけど……』
 陰は変化を解除してケモ耳と尻尾を元に戻した。
 そして何だか意地悪をし損ねた気分になった。

 

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