獣神恋々奇譚*15ページ目『無人島旅行三』

注意

  • この物語はとある版権物の影響で制作されている
  • 純粋な漫画でも小説でもない
  • 矛盾が生まれる可能性アリ
  • 私は小説や漫画等を描くのが得意ではない

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◆◆◆

 大きな船は空を飛んでいた。
 窓の外には空魚とソラクジラが飛んでいる。*1
 陰は窓からその光景を眺めつつ、初めての空の旅に尻尾をフリフリご機嫌で艦内を回っていた。
 色々思う所はあるのだが、考えていても仕方がないと楽しむ事にしたのだ。
 船は広く、ゲームができる場所やプールも完備されている。
 酔う人もいるとフレイから聞いていたが、船はあまり揺れていないし乗り物に乗り慣れてない陰でも酔いはなかった。
 なので艦内地図を見ながら施設を一通り回り、最後に医務室に向かう。
 そっと医務室の戸を開け中を覗き込んだ陰は、顔を輝かせてムキムキのじじぃに抱き着いた。
「ばんじい、久しぶり!」
 陰は尻尾をブンブン振って喜んでいる。
 陰が抱き着いてるのは万という医者の爺さんだ。陰が子供の頃に世話になったじじぃで今回の旅行に来ると鴬に事前に事情を説明した時に聞いていたから来たのだ。
 そしてこのじじぃ、ジムに通って鍛え上げられた筋肉が特徴的なのだが……。
「おお陰ちゃん、久しぶりだね。随分立派になって……」
 ばんじぃはそう言って陰の胸を見る。しかし胸は押さえているから本来の大きさは分からない。
「ワシの予想では結構でかくなってると思うんじゃが……、そんなに抑えて苦しくないかい?」
 このじじぃはすぐにそういう事を言う。
「大丈夫! じゃぁ、私は鴬さん達に会ってくるね」
 陰はそう言って手を振るとパタパタ医務室を出て行き、じじぃもそんな陰に手を振り見送った。

 館内案内図を見つつ、周囲を伺いながら鴬の部屋の前までやって来た陰は小さくノックする。
 すると「は~い」という返事の後に長い髪をした女性がドアを開けた。
「来てくれたのね。さ、入って」
 暝玉に見られたらまずいからと言わんばかりに彼女、鴬は陰を室内に入れると戸を閉め、鍵もしっかり掛けてから抱きしめる。
「久しぶり、陰ちゃん。大きくなったわね」
「鴬さんは変わりませんね」
 陰が鴬達と仲良くなったのは七年前。その頃鴬は既に成人していた。
 そして彼女は二十代前後で体の成長は止まるタイプだ。なので今もあの頃と変わらない姿をしている。
「私はもう年を取らないから」
 鴬はふふっと笑い陰の背中を押して部屋の奥に招き入れると、そこには褐色の肌に灰色の髪をした狼系妖魔のアドがいた。
「陰、久しぶり。大きくなったな」
「アドこそ見違えたよ!」
 そう言って拳骨と拳骨を当てて挨拶する。
 そして陰が着ている半袖甚平シャツの袖から伸びる左腕を、心配そうに見た。
「もう大丈夫だよ」
 そう言って陰は左の手を握ったり開いたりする。
「そうか」
 そう言って彼は笑顔を向けた。
「もうずっと電話とかメッセージのやり取りばかりだったから、こうしてまた会えて嬉しいよ」
 鴬はそんな様子をしばらく静かに見守った後。
「そうだ。陰ちゃんは朝食、どうしたの?」
「あ……まだちゃんと食べてないです」
 すると陰のお腹がグ~と鳴る。
 今日はとても早く起きて、普段朝食を食べる時間よりも早くこの船に乗り込んだ。
 そして陰は出てくる時に菓子パンを軽く食べたからと好奇心で館内を巡り、その後も食事をとらずに知人に会いに行ったのでお腹がすいていたのだ。
「それなら今から頼んで持って来てもらって、ここで朝食にしましょうか? それとね、陰ちゃんが来るって聞いておいしいアイスを用意したの。一緒に食べましょ」
 こうして陰はここで朝食を取る事になった。

 朝食後。
 鴬は部屋に備え付けられている冷蔵庫の冷凍室から高級アイスを3つ取り出して、皆で食べ始めた。
「まったく、暝玉ったらこんなに可愛い男の子、いるわけないのに……」
 ソファーに腰かけ、鴬は口に入れたアイスを飲み込んだ後ため息交じりに言った。
「でも暝玉様が全然気が付かないから、この作戦は今の所順調なので」
 鴬達には事前に何故男装しているかの説明をしている。なので二人はその事も含め話に花を咲かせていた。
 そして陰はアイスを一口食べ、そのたびにおいしくてついつい尻尾をバタバタさせ、アドは陰の隣でアイスを食べつつホコリを立てる陰の尻尾を自分の尻尾で押さえた。

 ちなみに陰は陽の事も聞いたのだが、陽が炎龍の守護者として宮廷に入ってしばらくしてああなったという情報しか分からなかった。
「まぁ、炎龍が何か言ったのだと思うけれど……」
 鴬はそう言いつつ陰を見て、少しだけ考えて「そうだわ、今日のお昼の事なんだけど」と話題を変えた。

 船は大陸の端に飛び続け、やがて海が見えてきた。
 陰はアイスを食べ終わり鴬と別れた後、その光景を窓の外から見て尻尾をブンブン振っている。
 そして暝玉は、陰が海が初めだと喜んでいたのを知っていたので『海が見えたらきっとはしゃぐだろう』とその姿を見たくて部屋から出て陰を探し、バッチリ見たいものが見れた後声を掛けた。
「ご機嫌だな」
「あ、暝玉様!」
 陰は尻尾をフリフリニコニコしている。
「海ですよ、海! 私、見れて嬉しいです!」
 そう言って心の中で『あ……』となった。
 初めての海に興奮し、うっかり一人称を私にしてしまった事に気が付いたのだ。
 しかし暝玉は特に態度を変えずに「ああ、よかったな」と答えてる。
「僕、今回の旅行は楽しみますね!」
「おお、楽しんでくれ」
 陰は張り切ってるな。と暝玉は思いながら答えた。

 そして二人が会話する前から偶然この場に居合わせ、コッソリ観察していた炎龍は
「いや、私って言ったじゃん。気が付けよ、暝玉……」
 と突っ込んでいた。

 ちなみに、暝玉は陰が一人称を私にしていた事に気が付いているのだが
『陰は結構いい身分で実家とかでは一人称が私なのか?』
 程度に思って、特に気にも留めていなかった!

◆◆◆

補足とか

 陰と鴬&アドは電話・メール・メッセージアプリで連絡を取り合っていたので、もしかしたら家から追い出されたとか男装して働いているとか、そういった事情はリアルタイムで知ってるかもね。

 

次回

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まとめ

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*1:空飛ぶ魚とクジラさん。よく一緒にお空のお散歩をしている