注意
- この物語の元となったのはとある版権物
- 後に矛盾が生まれる可能性アリ
- 色々あってこの物語はいらない子となった為、突然終了の予感
- 私は漫画や小説などを作るのは得意じゃない
- これは創作物だ。実在のものとは一切関係ない
前回
今日は夏祭り初日。
といっても、御影荘は営業中なので昼間祭に出かける事はない。
「暑いしね」
レンは仕事をしながらそう呟いた。
「さっちゃんは夜、お友達と一緒にお祭りに行くって言っていたわよ。レンちゃんはどうするの?」
そう、レンの隣にいた詩葉が聞いてくる。
夜ならば、お祭り会場は混んでいるが御影荘はもう閉めてる。好きに出掛けても大丈夫なのだ。
「シンと一緒に出店を回って花火を見る約束した」
「そっか。浴衣、着てみる?」
「んー、着てみようかな?」
そう詩葉とレンが話をしていると、アイが通りかかったので詩葉は「アイちゃんは今夜のお祭りどうする?」と聞く。
「アタシはいいや」
そう言って立ち去るアイの背中を詩葉はため息交じりに見送った。
「昔はフタと一緒に浴衣を着て出かけたのにねぇ」
「そうなんだ?」
「そうなのよ。あの子はフタの恋人として来た子だし、昔はフタといつも一緒だったのにね」
「ふ~ん」
『今はなんかよく分からんが、フタがアイを少し避けてる気がするな?
何かあって熱が冷めたか』
と、レンは考えて終わった。
*
夜。
「行ってきます」
まずはサチがそう言って、御影荘に来たバスに乗り家を出て数分後。
「行ってきまーす」
「行ってきます!」
今度はお互い浴衣を着たレンとシンがそう言って家を出ると、バスに乗り込んだ。
ちなみにこのバスは大き目の一般乗用車程度であり、どちらかというとタクシーに近い。
しかし完全予約制のバスとして低価格で乗れるように市が運営している、立派なバスである。
「浴衣、乱れないかな?」
椅子に座ってシートベルトを付けたレンはちょっとだけ心配でそう呟く。
ちなみに着付けは詩葉がしてくれた。
「大丈夫だよ。もし帯がほどけちゃったりしても、僕が直せるから」
「そうなの?」
「うん。何気に子供の頃から男性のも女性のも着物と合わせて着付けを教わってたからね」
「ふ~ん。シンって見た目によらず凄い所があるよね」
そう言ってレンはポヤポヤした見た目の癖に、木の選定を綺麗にしていたり、書類整理などの雑務を素早く行っていたりする姿を思い出す。
「うぅ、確かに見た目はこんなだけど……」
こうしてバスは途中で乗客を乗せつつ、お祭り会場の手前までやって来た。
ちなみにシンが車を出さなかったのは、駐車場が限られており混み合うからだ。
このバスならお祭りの日は本数を増やすし相乗りもできるので、楽に祭り会場まで行き来ができる。*1
「さて、どこから回ろうか?」
「いっぱいお店あるね。人もいっぱい……」
レンはぐるりと周囲を見渡す。
「一旦お店を全部見てみる? 移動は大変になっちゃうけど……」
レンはお小遣いを持って来ているが、それには限りがある。
だから、目に付いた気になる物を買っていくと、恐らく後半買えない物が出て来る。
「そうだね」
そう言って歩き出し。
「あ、そうだ。シン、手を繋ごう? ここではぐれるのはちょっと不安だし」
そう言ってレンはムンズとシンの手を取り、彼が顔を真っ赤に染めたのにも気が付かずに歩き出した。
*
レン達がお店を一回りし、欲しい物を買っている頃。
詩葉と武蔵が花火を見に二人で出掛け、しばらくすると出店で買った食べ物を持ったサチが帰って来た。
花火が上がる前に友達と別れ、一足先に家に戻ったのだ。
「アイちゃん、頼まれていたイカ焼きです!」
サチはリビングにいたアイに、頼まれて買ったイカ焼きを渡した。
「サンキュー。じゃぁ、お金」
そう言ってアイはスマホを操作し、電子マネーをサチに送金する。*2
「こんなに高くなかったですよ?」
送られて来た金額を見てサチはそう言うが
「買ってきてくれたお駄賃だよ」と、アイはイカ焼きを持って部屋に行ってしまった。
サチもいつもの事なので特にごねず、次はイツの姿を探す。
ほどなくして事務所で雑務をしていた彼の姿を見つけたサチは
「イツさん。これ……」
と、広島のお好み焼き、大阪のたこ焼き、りんご飴、チョコバナナを差し出した。
「あの、もしよかったら今年も一緒に花火を見ながら食べませんか?」
サチは毎年、人混みが苦手でお祭りに行けないイツの為にこうして出店で食べ物を買って、花火を見ながら一緒に食べているのだ。
イツは「そうだな」と頷き作業を終わらせると、花火が見える2階の外にある廊下にキャンプに使う小さめの椅子とテーブルを持って移動した。
*
レンが出店で買った食べ物をベンチに座りモシャモシャ食べていると。
「そろそろ花火が上がるよ」
と、スマホで時計を見ていたシンは「こっちだよ」とレンの手をまごまごしながらも取って花火観覧ポイントのまで案内し。
ほどなくして、花火が上がる。
「おー、相変わらずすごいうるさい。声、聞こえない……」
そう悪態を付きつつも、レンは空に上がる花火に感動していた。
梅雨が明けてから花火が打ちあがる事が多かったが、どれも遠くでこんなに間近で見たのは初めてなのだ。
シンはしばらく感動して目をキラキラさせてるレンを見ていたが、「来年も一緒に見れるといいなぁ」と呟いて花火が次々と上がる夜空を見上げた。
「ねぇ、あれシンとレンちゃんよ」
花火を見に来た詩葉が隣の武蔵の耳元でそう言う。
指さす少し離れた場所には、シンとレンが立っていた。
「本当だ。でも、声をかけるのはやめよう」
「邪魔しちゃ悪いものね」
一方御影家では。
サチとイツは外廊下に椅子とテーブルを置き、サチが買ってきた物をシェアして食べながら花火を見て。
アイはまだフタが仲良くしてくれた頃を思い出しながら、部屋の窓からイカ焼きを食べつつ一人で花火を眺め。
フタは花火の音が聞こえ出してからゲームをしていた手を止め窓の外を覗き、花火を見ると少し悲しげな顔をして、でもすぐに何事もない様な顔で再びゲームを始め。
そしてボクはビルの屋上で毬華と共に花火を見ていた。
シンの兄達の呼び方
シンは兄を兄様と呼び、両親の事は父様母様と呼んでいる。
シンだけ。
「そういえば、何か理由があるの?」
レンはシンのポヤポヤした顔と何か関係があるのかと、シン本人に訪ねてみると。
「あ~、僕が幼稚園の頃にね」
+++
フタは6歳の弟に「うちのご先祖様は貴族なんだよ」と突然話を始めた。
「きぞく?」
シンはよく分からなくて聞き返す。
すると「僕達のお祖父ちゃんのまたそのお祖父ちゃんの、ずーっと昔のお祖父ちゃんは、貴族っていうすごく偉い人だったんだ」
とフタは簡単に説明し、シンは「すごーい!」と目を輝かせる。
「でね、貴族は……」
+++
「フタ兄様から「貴族は家族を呼ぶ時に様を付けるから、シンもそうした方がいいよ」ってそそのかされて、それで僕分かったってそう呼ぶようになって……。
後でそう言えば他の家族はそういう呼び方はしてないし、騙された! って思った頃にはすっかりその呼び方が馴染んでて、今に至るってワケ」
「ふ~ん。間抜けな理由だね」
次回