Dへの扉

謎生物、地球でやりたい事をする

EVE#019『お花見』

注意
  • この物語の元となったのはとある版権物
  • 後に矛盾が生まれる可能性アリ
  • 色々あってこの物語はいらない子となった為、突然終了の予感
  • 私は漫画や小説などを作るのは得意じゃない
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ayano-magic.hatenablog.jp


 サチの誕生日から数日後。
 御影荘は世間が春休み中な為、少しだけ忙しい。
 その上、イツやフタ達は時々警察の仕事を手伝っているから御影荘からいなくなる事もある。
 レンも何度も謎の車に乗り、(特にイツが)疲れた顔をして帰って来るのを目にしていた。
 そんな中、桜が満開である。

 皆で朝食を食べている時。
「レンちゃん。明日のお昼、僕と一緒に近くの公園でお花見しない?」
 時間が空く日を見逃さずに、シンはレンをデートに誘う。
 それは、今は友達だけどいつかは恋人に……という下心もほんのちょびっとあるのだが、単純にレンの事を知りたいとか、どうやらあまり世間を知らないレンに色々見せてやりたいという気持ちでだ。
「する!」
 レンは目を光らせてすぐさま返事をし、朝食をついばむホーを見る。
「ホーも行く?」
 ホーは食事いったん止め、シンを見る。
 シンは『一緒に行こう?』と言いたげな顔をホワホワと向けていた。
「ワシはいい。桜は何度も見ているしな」
 そう素っ気なく言うとホーは食事を再開し、シンはちょっとだけ残念そうにした。
「じゃぁ、あたしがお弁当を作ろうか?」
 アイの提案に「わーい! お願い~」とシンは嬉しそうに返事をし、入れてほしい物を告げていく。
 そんな光景をボクは黙って見ていた。

 

 朝食後。
「アイ、お願いがある」
 ホーと離れたレンがコソコソしながらアイに話しかけていた。
「何だ?」
 アイもつられて小声だ。
「明日のお弁当、唐揚げも入れて? ホーがいる前だと言いづらくって」
 唐揚げ。
 ホー達と暮らしている時は、その料理の存在は知っていても食卓に並ぶ事はなかった。
 それは仕方がないと思っているのだが……。
 御影家に来てから食べた唐揚げは、とてもおいしかった。
 だからレンは、ぜひともお弁当に入れてほしいと思ったのだ。
「うん、分かった。ちょっと多めに入れておくな」
 笑顔でそう言うアイに「ありがとう」とレンも嬉しそうな顔を向けた。

 

「そう言えば、ボクは一緒に行かないの? お花見」
 各々仕事に向かう中。
 フタはボクにそう聞いてみる。
「わたくしは誘われていませんから」
 そうボクは涼し気な顔をしながら『本来ならばシン様を陰ながら見守る所だが……、今はあの鳥がいるからな』と、ホーを横目で見やる。
 ホーは何だか呑気気に日向ぼっこをしていた。

***

 翌日。
 仕事を一旦切り上げたシンと、この間の買い物で手に入れた矛盾塊Tを着たレンはお弁当を持ち。
「行ってきま~す」
「行ってきます」
 と二人で出かけていく。
 そしてその跡を、二体の影が追った。

 公園に着き、レンは周囲をぐるっと見渡しながらスマホで写真を撮る。
 自分のスマホが届き、レンにとっては物珍しい物ばかりだから余計に色々撮っていた。
「親子が多いね」
「公園だからね」
 レンは親子連れをボケーと見た後、再び写真を撮りだし。
「レンちゃ~ん! こっちが良さそうだよ」
 気が付けば、シンが少し離れた所で手を振っている。
「んー」
 レンはのんびり歩いてシンの後を追った。

 お弁当を食べる場所に向かう途中、池に差し掛かり。
「魚がいる」
 写真を取りながらレンが呟くと「鯉だね」とシンが答える。
「鳥もいる」
「カモだね」
「おいしそうだね」
「え?」

 そんなやり取りをしている二人に、木の陰から熱い視線を向けている者達がいた。
「一見すると恋人同士に見えるが、まだ何事もないな」
 ホーが木の枝からレン達を見てそう呟く。
 すると「そうだな」と相づちされて、ビックリして声の方を向くと……。
「ボク!?」
 ボクは木の枝に止まるホーの真下、レン達からは見えづらい位置に立って彼女らを見ていた。
「お主も来ておったのか」
 そう言ってホーは呆れたような視線を向ける。
「別に。散歩をしていたらシン様達のストーカーをするお前を見つけただけだ」
「ストーカーではない!
 ただ、レンがシンとやらと実際どの程度親密なのかをしっかり調べてやろうと、こういったイベントを利用して陰で見ていただけで……」
 口答えをするホーにボクは何も言わず
『コイツの監視をしていたらこの現場に来た訳だが……都合がいい。一石二鳥とはこの事だな』
 と思う。
 そして「ほら、二人が離れる。後を追うぞ」
 と言い歩き出し、ホーは
『このボクとかいうヤツの事は気に食わんが、今はそんな事を気にしている時ではないか』
 と思い「ふむ。そうだな」と言うとボクの頭の上に乗り。
「せめて肩にしろ」
 ボクはホーを肩に移動させ、足音も立てずにシンとレンを付けて行った。

***

 シンとレンの二人は、近くに大きな桜の木がある場所にレジャーシートを広げ、早速お弁当を食べ始めた。
 お弁当の中身は、三食だんごの様にふりかけで色が付けられた三色おにぎりと、卵焼き、タコさんウインナー、煮物、ほうれん草の胡麻和え、そして唐揚げだ。
 デザートに苺も入っている。
「おー」
 レンは感動して早速唐揚げに箸を伸ばし、シンもおにぎりを食べ始めた。

 

『レン、唐揚げを食べておるな……』
 ホーは気絶はしていないが、複雑な気持ちになっていた。
 その隣でボクはカロリーメイト・フルーツ味を食べている。
「な、お主いつの間に!」
「お前も食うか?」
 ボクはそう言って少し割って差し出し。
「う……うむ。いただこう……」
 とホーが受け取ると「肩で食べると私が汚れるからな、下で食えよ」と添える。
「分かっておるわい!」
 ホーはピョコンとボクの肩から降り、カロリーメイトを細かく砕きながらついばんだ。

 

「お弁当、おいしいね」
「うん」
 レンは黙々と食べている。特に唐揚げ大目で。
『レンちゃん、唐揚げ好きなのかな? おいしいもんね。でもホーがいる前じゃ食べられないからなぁ』
 シンがホワホワそんな事を考えていると、強めの風が吹いた。
「わわわ! 花弁がお弁当に付く~!」
 シンは慌ててお弁当を守る。
 すると
「お、シンに花弁が付いたー」
 と、レンはスッと手を伸ばしてシンの髪に付いた花弁を取ってやった。
「ん。取れた」
「レ……、レンちゃん、ありがとう……」
 シンは顔を赤らめて少女漫画ヒロインの様にトゥンクしているが、レンは気が付かずにお弁当の残りを食べる。
 そして
「「あ~~~~~~!!!!!!」」
 と、声を潜めて一人と一匹は叫び声を上げた。

***

 レン達が帰り道を歩いている頃。
 一足先にホーと共に帰って来たボクは、ほげーと庭の桜を見つめるサチを見つけた。
「レンちゃんとシンさんが羨ましいです……。サチもイツさんと……」
 そう独り言を言って頬を赤らめる少し間抜けな顔のサチを見て、ボクは特に声を掛けずに通り過ぎ……。
「イツ様。サチはイツ様と一緒に花見がしたいみたいですよ」
 と告げ、驚いた顔のイツを置いて去って行ったのだった……。

 こうして夜。

 一仕事終えてイツは一人、桜が見える旅館の広間で酒を飲んでいた。
 庭は照明があり比較的明るいので、室内の電気は消して外が良く見えるようにしてある。
 この日、泊り客がいないからこそできる事だ。
 そこにジュースと柿ピー、そしてスルメイカを持ったサチがやって来る。
「あの……、一緒に良いですか?」
「ああ……」イツは断る理由もないので座るように促す。

 ちなみに、サチがここに来たのは。
 イツが酒を飲み始めた頃。
 ちょうどその姿を見たボクが流れるような動作で自販機でミルクセーキを買い、自室からスルメイカと柿ピーを取って来てサチに差し出し
「イツ様が一人広間で花見酒を楽しんでいるから、これを持って行け」
 と言ったからだ。
 こうして一応サチの念願は叶って、イツと二人並んで夜桜を眺める事には成功したワケだが……。
『そう言えば、サチが俺と一緒に花見に行きたいと言っていたとか、ボクが言っていたな……』
 そう思ってサチをちらりと見る。
 サチは何か言いたげな顔をしてミルクセーキを両手で抱えていた。
 もちろん言いたい事は『来年はイツと一緒に花見に出かけたい』という事である。
 しばらく二人は無言で過ごし。
「サチ、今年は時間がもう取れないが……。来年は、弁当を持って一緒に花見に行くか?」
 イツは勇気を振り絞っているが、あまり表情が変わらない上、部屋が暗いのでいつもと変わらない様子に見える状態でそう誘う。
「平日なら、人も少ないしな」
 人が多い所が苦手な彼はそう付け加えた。
「良いんですか?」
「ああ。来年は早めに予定を開けておこう」
 サチは嬉しくて、お酒を飲んでる訳でもないのに火照った顔でイツに笑顔を向けた。

 

 その頃。アイもベランダで桜を見ていた。
「前は、あたしもフタとお花見に出かけたな……。あの頃はフタがお弁当を作ってくれたっけ」
 と少し寂しそうな顔をし、部屋に戻った。

 それと同じくらいの時。
 フタも、お風呂から上がってベッドに横になりながらあの頃を思い出す。
『前はアイと一緒に出掛けたな。僕がお弁当を作って……』
 しばらく物思いに耽っていた彼だが、ムクリと起き上がると考えていた事を忘れるようにゲームを始めた。

***

 ボクは深夜、一人出掛けた。
 いつもの黒いスーツで。
 でもいつもは白いシャツが、黒かった。
 そして一人の女性と会う。
 彼女はボクより年上で、真っ黒なロングスカートのワンピースを着ていた。
 ボクはそんな彼女に軽く手を上げ挨拶すると、柔らかく微笑む。
 しかしすぐに顔を引き締めると、彼女と一緒にぼんやりと街灯に照らされた桜並木を歩く。
「ボクはどうして普通に戻らないの? いつだって戻れるのに」
 特に感情を感じさせない喋り方、そして無表情の彼女はそう呟く。
 そんな彼女は少しレンと似ていた。だが隣に立つボクにそう言う者がいたとて、彼はきっぱり否定するだろう。
「別に。必要が無い」
「そう? 御影家にいるあなた、楽しそうだけど」
 前方にトラックと数名の人影が見えて来る。
「確かにあそこは楽しい。だが、あそこは俺の居場所じゃない」
「そんな事ない」
 そう言う彼女の手から、刀が伸びて来る。
 まるで植物が生えるように。
「毬華は優しいな」
 そう答えたボクの手からも、毬華と同じ刀が伸びて来る。
 そして、音もなく人影に歩み寄り背後に回った彼らは、トラックの周辺にいた人々に刀を振り上げ……。

 

 次の日の朝。
 EVEの不法な売買をしていたグループが何者かにより殺害されたと、ニュースが流れた。
「警察では、この事件に『死神』が関わっていると見て調査を進めています」
 ボクは、誰もいないリビングで付けっぱなしのテレビが流すこのニュースを見て、消した。


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