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謎生物・創作の軌跡11-2『星渡りの子~すみっこ星の大騒動~』ストーリー

◆注意◆

 これは、脳内でグヘヘっていたりやたらと細かい設定を考えてはみたものの、それ以上には行けなかった創作物。

星渡りの子まとめ

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創作の軌跡まとめ

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響牙と夕空の出会い

 “また来てやがる”

 夕方。

 社国のカサカケ様を祀っている山の上で、社の傍に住む社管理人の響牙はある一点を見つめていた。

 その視線の先には、小さな社のカサカケ様の石像の前で熱心にお祈りをする少女がいる。

 彼女は紺色のセーラー服に緑のスカーフを着けており、近場にある学校の高等部の生徒だという事が響牙にもすぐに分かった。

 大方何か叶えて欲しい願いでもできて、ここの所毎日学校帰りに通うようになったのだろう。

 “まったく。普段は車があってもこんな場所まで来ないくせに、願い事ができた時だけやって来るなんていい気なもんだ”

 響牙は願いがある時にだけカサカケ様にお参りにやって来る人達を冷めた目で見ていたから、初めの内はこの少女の事もそう見下していたし、すぐに来なくなると踏んでいた。

 だが彼女の足が遠のく気配はなく、雨の日だろうと毎日平日は夕暮れに、休日は朝に来てお祈りし、時折野に咲く花を生けて帰ってゆくという習慣がかれこれ3か月ほど続いていた。

 ……カサカケ様の石像の両側には、お墓の様に花を生ける場所もきちんとあるのだ。

 しかし響牙は最低限の掃除はするが、今まで花を生けたりは一切していなかったが。

 

 そして今日もいつも通り、熱心にお祈りをする少女を陰から値踏みするように眺めた。

 でも今日は花を生けお祈りが済んで帰る少女の後ろ姿が完全に見えなくなった後、カサカケ様に近寄ってみる。

 “今日の花は野菊か”

 その花を見て響牙はふと、自分が10になる前に死んだ両親の事を思い出す。

 “そういや親父もお袋も、花を生けてたな……”

 両親の事を思い出したせいだろうか? 花を添えられたカサカケ様がほんの少し嬉しそうな顔に見えた。

 

 しかし、それでも響牙はあの少女を小馬鹿にしていた。

 なぜなら、巷ではカサカケ様が願いを叶えるなどと言われているが、それはある時代から出てきた噂に寸分変わりない程度の話でしかなく、実際にはそんな記述は全くないのだ。

 だから飽きもせず熱心にお祈りをしに来る少女の熱意が他の参拝客と違うという事は認めても、馬鹿な話に踊らされている哀れな女。という見下す心はまだ持っていた。

 だが、こうも熱心にお祈りに来ているのを見ると願っている事が何なのかが段々と気になり出してしまって、だから響牙はいつも隠れて少女を見つめていただけなのに、そこから出て声を掛けてしまった。

 

 その少女が夕空である。

 

 そしてそれが縁になり、初めはカサカケ様の所で話をしているだけだったのが家の縁側で一緒にお茶を飲むようになった。

 やがて家の中に招き入れ、響牙のもう一つの仕事である物売りの商品を見せたりどういう代物かを教えてやったりするようにもなった。

 そしてそういった中で、夕空が数か月前事故で両親を亡くし親戚もおらず天涯孤独なのだと知った。

 しかしどんなに仲良くなっても、結婚をしてからも、響牙は夕空の願いを子供が生まれるまで聞く事はなかった。

 それは「願いを口に出したら叶わなくなる」という、やはり根拠のない言い伝えをかたくなに守っていたからで、彼女の願いは『家族が欲しい』だったのだ。

 これは今まで一緒にいた家族が突然いなくなってしまった寂しさから生まれた願いだ。

「あなたはカサカケ様に願いを叶える力はないって言ったけど……願い、叶ったわね」

 と、小さな二人の子供を抱いて柔らかく微笑む夕空は言った。

 

父の行方不明

 夕空が響牙と家族になり、生まれた子供が九つになったある日。

 響牙はいつもの様に品物を売りに星渡りを使い違う星へと出かけたのだが、次の日から連絡が途絶え携帯電話が繋がらなくなった。

 そしてその次の日も連絡はなく、家にも帰ってこない。

 なので心配した夕空は捜索願を出した。

 響牙は星渡りなどで出かける時は必ず家族に予定を伝えてくれるし、他所で泊った日の夜と帰る数時間前にはきちんと連絡をする人だ。

 だからその情報を元に警察が彼の行方を調べた結果、すぐに情報が出て来たのだが……。

 それはこのような物だった。

 

 響牙は途中まで予定通りに行動をしていた。

 しかし2日目に星渡りを2回した後、移動にバスを使っていた響牙は落石事故に遭う。

 それは死傷者を多数出した事故で、中から響牙の携帯電話含む荷物と致死量には達しないが彼の血痕が出てきた。

 しかし、響牙自身は発見できない。

 なので警察は、怪我を負った響牙が無意識に星渡りを使い、どこかに飛んでしまったのでは?

 という結論に達したが、どこに飛んだかまでは分からずじまいであった。

 

 更に警察は星渡りの能力者であれば1日もたてば家に帰る事は可能で、それをしないのはバス事故の後に更に事件や事故に巻き込まれた可能性が高いと判断しつつも、一般人の行方不明者に大して手間もお金も掛けられない。

 なので各星々の警察に行方不明者の情報を共有して終わってしまった。

 

 

「お母さんにも星渡りの力があれば、お父さんを探しに行けたのにね」

 響牙が失踪して一カ月ほど。子供達と共に響牙の帰りを待つようになってから夕空は時折そう呟くようになっていた。

 星渡りを使えない者が別の星へ向かうには、それなりのお金が必要だ。おいそれと簡単に探しに行けない。

 それに子供たちの事もある。

 しかしそれでも夕空は、今すぐにでも響牙を探しに行きたいと願っていた。

 

 そして夕空は子供たちの前では気丈に振舞うようにしていたが、大好きな夫がいなくなって弱っているのは幼い子供達に筒抜けだった。

 なので子供達は子供達で、意地悪な同級生から父が家出したのだと酷い言葉をかけられても、それは二人だけの秘密にしようと、母に言って悲しませないようにしようと、つらい気持ちをグッと押し殺していたのだ。

 でもそんな風に我慢をしているのは、母を悲しませない為だけじゃない。

 それは響牙が出かける前の日の事だ。

 

「土産は何がいい?」

 響牙が子供達にそう聞いた時、子供達は響牙が行こうとしていた星の一つにあるテーマパークでのお土産をねだった。

 数日前から二人で話し合い決めた事だ。

 しかし……。

 父はそのテーマパークに向かう途中で事故に遭った。

 もし、あの時自分達がお土産をねだらなければ、父は今も傍にいてくれただろう。

 母は陰で泣く事もなかっただろう。

「私達があんなお願いをしなければ、お父さん今頃帰って来てたかな?」

 雫がポツリとつぶやいた。

 時雨はそれに何も言えないでいた。

 

 小さな双子の心には、あの後から深く棘が刺さってた。

 

その頃の響牙

 そして響牙だが、もちろん生きていた。

 しかし事故に遭い頭を強く打った上、向かう先をイメージせずに無意識に星渡りをし、エストレム星団の端の方、あまり知られていない小さな星に移動してきていた。

 その星はよその星との交流もない、宇宙船もない小さな惑星だ。

 更に響牙は自分の名前や家族の事などの記憶を失ってしまっていた。

 なので記憶を失うと共に星渡りも上手く使えなくなり、そもそも使えたとしても帰る家をイメージできないので帰れなくなっていたのだ。

 更に警察に身元不明者の報告は出してもらえたが、この星には他惑星とやり取りするのに必要な通信機にまともな物がなかった。

 なので一番近い他惑星同士交流している星の警察に報告が届くのに、最低1ヵ月は掛かるという状況であった。

 

「ゴンさんがここに来てからもうすぐ1ヵ月か」

 日焼けした大柄な老人が、自宅のテラスから本を片手に隣の男にそう問いかける。

「そうだな」

 星渡りで突然やって来た怪我をし記憶喪失の得体のしれぬ男を、なんの抵抗もなく手当てし寝る場所を与え、身元不明者の届け出を出したついでに『ゴンさん』という安直な名前を付けたムシナという男の隣で、スケッチブックとにらめっこをするやたらと目つきの悪いゴンさんはそう答える。

「まだ何も思い出せんのか?」

「まあな」

 そう言う彼が向き合うスケッチブックには、ぼんやりとした三人の人が描かれていた。

 それは、ゴンさんがこの小さな星にやって来てすぐに頭に浮かぶようになった映像の絵だ。

 この映像が頭に浮かんだ時、何かに描き止めておきたくてムシナに頼みスケッチブックと色鉛筆を買ってもらった。

 しかしその映像は霧の中にでもあるかのようにかすんでよく見えない。

 だから絵もかすんでしまう。

 けれどどうやら中央に大人の女性がいて、その左右に男の子と女の子の子供が二人いるようだ。

 ムシナ曰く「これはきっとお前さんの奥さんと子供だな」だそうだ。

 もちろん根拠はない。

 なにせゴンさんは記憶を失った訳も、この三人が実在する人物なのかも、もしそうだとして彼女らの事を自分はどう思っていたかも、思い出せないのだから。

 しかしムシナに

「早く思い出さんとな。きっと今もお前を思って泣いているぞ」

 などと言われるたび、胸がチクリと痛む。

「でも、もうすぐ俺の届け出が付く頃だろ? 俺にもし家族とかいれば……」

「会ったら記憶が蘇るかもな」

 そう言ってカッカッカ! とムシナは笑った。

 そんな、少し希望が見えて来たこの日、異変が起こる。

「おい、ゴンさんお前……!」

「なんだぁ?」

 ムシナの驚愕した声でスケッチブックから目を離す響牙は、とんでもない光景を目の当たりにする事になる。

「フクロウ?!」

「スライム!!!」

 

お父さんが見つかった?

 今日から夏休みという日、双子は自由研究にの為に虫取りセットを探していた。

 そして父の部屋の押し入れの奥から、父が子供の頃に星渡りをする時使ってたスケッチブックが発掘される。

 その中の花畑の絵を見た双子は、この場所が父の親友で時々遊びに行く白泉の住む惑星だと気が付く。

 その瞬間、二人は白泉の病院前にいた。

 星渡りの力が目覚めたのだ。

 

 時を同じくして、夕空の元に一本の電話が掛かってきた。

 それはエストレム星団の端のヨツバという惑星で、響牙と思われる記憶喪失の男性が見つかったという物だ。

 そしてその電話のすぐ後に、白泉からも電話がやって来た。

 内容は、時雨と雫に星渡りの力が目覚めて今は自分の元にいる事。

 そして、しばらくしたら家に帰すという物だった。

 夕空は動揺しながらも、白泉と子供達に響牙と思われる男性が見つかったと報告をした。

 

 家に帰ってきた双子は喜んで母親に抱き着いた。

「明日、お父さんに会いに行こう!」

 しかし夕空はまだ響牙本人だと分からない事と、一度も行った事がないよく分からない星に双子の星渡りを使い向かう事を許可しなかった……。

 

 しかし双子はそれでもめげない。

 一度は素直に言う事を聞くふりをして次の日、自由研究の為の虫取りをしに出掛けると言って家を出た後、二人は図書館に向かった。

 そこで数少ないヨツバの情報を得て、それを頼りに星渡りを使う。

 

 とんだ先は、何やら柔らかい物の上だった。

 それは、気が付いたらスライムになっていたゴンさんだったのだ……。

 

 こうして、無事にヨツバのヒトバへやって来れた双子は、やたらと目付きの悪いスライムのゴンさんとフクロウのムシナに色々説明をされ、説明をし、なんやかんやでゴンさん改め響牙の記憶が戻ると共にスライムが父と発覚した。

 

 スライムのまま社国に戻ると色々面倒な事になるかも? と父を置いて自宅に帰った双子は、母にもろもろの事を話した。

 もちろんすごく怒られた双子だが、でもこれで明日こそ一緒に父親に会いに行く事を許可される。

 そして警察に事のあらましを伝えつつ、夕空達親子はエストレム星団の端にある惑星ヨツバに旅立ったのだ。

 

 あと、夕空はスライムになった響牙を見ても動じず、すぐに響牙だと分かり「別にこのままでもいいわよ」と言ってのけ、手足がないスライム響牙の為に食事を食べさせてやったり体を洗ってやったり、甘々だった。

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 ゲーム自体は双子ちゃん操作だけど、サイドストーリーが楽しいのは響牙と夕空。

 って妄想してました。