Dへの扉

謎生物、地球でやりたい事をする

長閑な国の王とケモノ 第五十八話『蘇月』

これは『著者:藤間麗 / 出版社:小学館』が権利を有する漫画『王の獣~掩蔽のアルカナ~』の非公式二次創作物です


◆注意する事ばかりで長くなった注意◆

 これは

  • 重度の中二病患者が作った黒歴史濃度の高い「アタイの考えたサイキョーの王ケモ設定!」
  • 原作のネタバレと世界観&キャラ崩壊
  • 女体化
  • 原作を読んでいる事前提だが、読んでいても意味が分かるとは限らない
  • 滲み出る変態性

 を含みます。
 そして私は

  • 小説・漫画・絵等を書くor描くのが得意ではない*1
  • あっぱっぱーだし中華風ファンタジーはもちろん書けん!
  • 王の獣は単行本7巻まで持っているが、それ以外は試し読みや読者の感想等で得た知識しかない*2
  • 王の獣のキャラが好きだがアンチという矛盾の存在

 です。
 それでも見たい人は続きへGO! GO!


第五十八話『蘇月』

八歳

 お母さんが仕事に行って数か月後。
 家に大きな荷物を持った大人が何人か来た。皆、暗い顔をしている。
 そして、お母さんが死んだって言った。

 大人達がお母さんのお葬式の話を始めた隙に、私は見たら駄目だって言われたお母さんだという大きな荷物を見に行った。
 だって、嘘かもしれないから……。
 私が荷物がある場所に行ったら先に藍ちゃんが来ていた。
 藍ちゃんは布を捲って立ちすくんでいる。
 布の中は……確かに、お母さんだ。
 それにお母さん、赤ちゃんがいるみたいにお腹が大きくなってる。
 藍ちゃんはそのままどこかに行っちゃったから、私がお母さんに布を掛け直した。

 そして私達は、二人で生きようと、何があっても離れないと誓った。


十歳

 アルカナ検査の日。
 私にアルカナがある事が分かって、ちょうど第三皇子・天耀様の従獣を決める年だからその面接に連れて行かれた。
 従獣の仕事は大変そうだ。それにもし従獣になったら藍ちゃんとあまり会えなくなっちゃう。
 でも……。
 従獣になってお金を沢山貯めたら、藍ちゃんを妓楼から出せるかもしれない。

 私、何もしないままは嫌だ。
 いつまでも藍ちゃんに甘えているのは、嫌だ。
 だから面接の時に従獣になりたいって言って、その理由も話した。
 そうしたら、その日に天耀様の従獣になる事が決まった。

 藍ちゃんには従獣になる事を決めた説明が出来なかった。
 だってお金を貯めても亜人を妓楼から出す事は難しいし、できない可能性の方が高かったから。
 藍ちゃんとの約束を破ってまで従獣になったのに、無理だったらきっと藍ちゃんガッカリしちゃう……。
 だから何も伝えられないまま藍ちゃんと喧嘩して、私は一人宮廷に向かい天耀様の従獣になった。

 従獣になってしばらくたった。
 藍ちゃんに会えないのが、寂しい。

 ある日。私はとうとう我慢が出来なくて、仕事の合間に物陰でお母さんの簪の飾りを見て泣いていた。
 すると、誰かが声を掛けてくる。
 それは彊虎様を連れた皇帝陛下だった。
 陛下は固くならなくてもいいって言って、私の話しを聞いて、私を慰めてくれた。

 それから。
 陛下はコッソリと、誰にも言わないで欲しいと言ってちょくちょく私に合いに来た。
 心配なんだそうだ。
 そしてそうやって会いに来た時は、大抵私に美味しいお菓子をくれる。
 藍ちゃんと、食べたいな……。

 庭を歩いている時、突然尻尾を掴まれた。
 びっくりして振り向くと、そこにいたのは人間の女の子だ。
 見覚えがあるなと思ったら、この子は天耀様のお母さん違いの妹の璃琳様だった。
 璃琳様は謝った後に自己紹介をして「また来るわ」と帰ってしまった。

 それから、璃琳様は何度も私に会いに来てくれた。
 私は最初、緊張してまともに話も出来なかったけど段々とお話出来る様になって、二人で宮廷をコッソリ回ったり、誰にも見つからない様に遊んで過ごす様になった。
 璃琳様と一緒に居るのは楽しい。
 
 また遊ぼうと約束して別れ。という事が何度かあった後、璃琳様が様付は嫌だと言ってきた。
 だから璃琳ちゃんと呼んだら、とても喜んでくれた。

 こうして私達は友達になった。
 いつか藍ちゃんに紹介したい。

 藍ちゃんと会える機会はあったのに、まだ全然会えていない。
 突然従獣になるって決めた理由も話せてない。
 藍ちゃんに、会いたい……。

 璃琳ちゃんに好きな人を教えたら「おかしいわよ。すごく変!」って言われちゃった。
 やっぱ、変だよね。亜人が人間を好きになるなんて……。

 璃琳ちゃんと喧嘩した。
 その後墨さんに注意されて、私……。

 体が痛い。
 きっとバチが当たったんだ。
 璃琳ちゃんに我儘だって言って、墨さんにはとても酷い事を言っちゃった。
 私、璃琳ちゃんから聞いてたのに。知ってるのに。何で酷い事を言っちゃったんだろう?
 謝らなくちゃ……。

 目が覚めたら知らない部屋にいた。
 傍には皇帝陛下と彊虎様が居て、安心した様子で私の顔を覗き込んでいる。
 そして、色々話してくれた。
 私の、自分の怪我をすぐに癒せるアルカナの事と、私が他国や危険な人物の手に渡らない様にする為ここで生涯を終えてほしいという陛下の考えを。

 最初は嘘かと思ったけど、確かに痛かった体は痛くなくなってる。
 ふと、お母さんの事を思い出す。
 あの時この国は隣国と戦争をしていて、治癒のアルカナがあるお母さんは戦地に赴き傷付いた兵士を癒していたんだと、後から知った。
 そして多分、この時にお母さんのアルカナが沢山欲しかった人達に捕まってしまったのかもしれない。
 それで……。

 陛下達がいない時、私は指を傷付けてみた。
 一旦は陛下の言う通りにすると返事をしたけど、もしかしたら私のアルカナが勘違いかもしれないって思ったから。
 それで、もし勘違いなら元の生活に戻れると思ったから。
 でも、傷は瞬く間に塞がってしまった。

 私がこの石壁に囲われた陛下の秘密基地に来てから、数日たった時。
 陛下に言われて天耀様と藍ちゃんにお別れの手紙を書いた。
 本当は太博様にも手紙を出したかったけど、言い出せなくて……。

 結局。太博様への手紙は、最後まで書けず仕舞いになった。

 皇帝陛下は自分の事を名前で呼んでいいと言って、様付も嫌がった。
 そして何だかんだで宗現さん、彊虎さんと呼ぶことになった。

 宗現さんは「この中ならどこでも自由に出歩いていいぞ」と言ってくれたけど何となくそんな気持ちにはなれなくて、しばらく部屋の中で過ごしていた。
 そんなある日、宗現さんが「見てもらいたいものがある」と言って私の手を引いてとある部屋に案内してくれた。
 そこで……私は色々教えてもらった。
 藍ちゃんにその話をしたら、きっと喜ぶだろうな……。

 藍ちゃんと遊んでいたらお母さんが「お父さんが帰って来たわよ」って言ったから、二人でお父さんを出迎えた。
 お父さんは私達を抱き上げてくれた。
 お父さんは大きくて、力持ちで、温かくて、モフモフだ。

 モフモフ?

 私は目を覚ました。
 あれは夢だ。
 けど、モフモフしてて温かいものがそこにあっる。
 それは……。虎だった。白くて、でかい虎……。
 私がびっくりして飛び退くと、添い寝をしていた虎は青い瞳で私を見つめて、ゆっくり起き上がってベッドから出ると器用に前足で戸を開けて、どこかへ去ってしまった。

 その後やって来た彊虎さんに事情を説明したら「そうか」と言われて終わってしまった。
 更にその後やって来た宗現さんに事情を説明したら、宗現さんが何かを言おうとした所で「陛下」と彊虎さんが何か咎めるように話を遮って終わってしまった。

 でも後で宗現さんと二人きりになった時に、その訳を聞かせてもらった。
「あの虎はな、彊虎なんだよ。あいつのアルカナは変化でな、虎になれるんだ。蘇月が元気がないから慰めの気持ちで添い寝をしていたんだろう」
 なんでも彊虎さんは子供が好きで、天耀様達が子供の頃はよく虎になって背中に乗せていたんだそうだ。

 私は心がポカポカした。


十五歳

 宗現さんがお母さんの形見の簪の飾りを数日預からせてほしいと言ってきた。
 だからちょっと寂しかったけど……、何か考えがあるんだと思って私は宗現さんに飾りを預けた。
 その数日後。
 飾りがちゃんとした簪として帰って来た。
 とても綺麗だ。
「挿してやろう」
 宗現さんが私の髪に簪を挿してくれる。
 でも、その時の宗現さん……悲しい顔をしていた。


十六歳

 宗現さんは日に日に体が弱っている様だった。
 何とかしたくて、私はある提案をしてみた。
 だけど、宗現さんは困った顔で断った。
「私にとっては蘇月は娘と同じなんだ。だから、二度とこのような事は言わないでくれ」
 結果として落ち込ませてしまった事に申し訳ない気持ちはあるけど、娘だと思われているのは嬉しかった。

 自分は戦に出る事はない。
 その代わり、私の子供が沢山作られる。
 沢山、沢山、子供を作り、産んで、死に方を探られ、兵器として教育され、戦に出される。
 そうしたら、この国はどんな国にも負けない強い国になる。
 そうしたら、沢山の人が笑顔で暮らせる。
 そうしたら、お母さんみたいに死ぬ人間もいなくなる。

 だから、だから必要なのだ。
 犠牲が、必要なのだ。
 だから私は……。

 黒い目と口をした自分の子供達が私に手を伸ばしてくる。
 苦しい、苦しい。お母さん、助けて。
 と。

 私は悲鳴を上げて……。

 

 目を覚ました。
 酷く恐ろしい、悪夢だ……。
「恐ろしい夢でも見ていたか?」
 傍には最近忙しいそうでやって来なかった彊虎さんがいて、私の顔を覗き込んでいる。
「ええ、まぁ……」
 私は何となく気まずくて視線を外した。
「あまり眠れていないなら、今日は無理をするな。それから……。
 近々、何か変わった事が起きるかもしれん。心しておけ」
 そう言って彊虎さんは去って行った。

***

 蘇月は、ここから出ようとしなかった。
 それは自身のアルカナの危険性を十分理解していたからだ。

 だから、彼女はここにいる事を決めた。
 この国の為にも……。

 

第五十八話『蘇月』終

 

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*1:なお、小説を賞に応募した事もあるが1次審査すら通過した事はなかったし、評価シートありの所では常に構成の評価が最低ランクだった

*2:試し読みや読者の感想等も36話くらいでよく見なくなり、大して分からない