これは『著者:藤間麗 / 出版社:小学館』が権利を有する漫画『王の獣~掩蔽のアルカナ~』の非公式二次創作物です
◆注意する事ばかりで長くなった注意◆
これは
- 重度の中二病患者が作った黒歴史濃度の高い「アタイの考えたサイキョーの王ケモ設定!」
- 原作のネタバレと世界観&キャラ崩壊
- 女体化
- 原作を読んでいる事前提だが、読んでいても意味が分かるとは限らない
- 滲み出る変態性
を含みます。
そして私は
- 小説・漫画・絵等を書くor描くのが得意ではない*1
- あっぱっぱーだし中華風ファンタジーはもちろん書けん!
- 王の獣は単行本7巻まで持っているが、それ以外は試し読みや読者の感想等で得た知識しかない*2
- 王の獣のキャラが好きだがアンチという矛盾の存在
です。
それでも見たい人は続きへGO! GO!
第六十九話『麗雲』
新たな皇帝が即位し、引継ぎや事後処理が粗方終わって少し落ち着いた頃。
天耀は江凱に会うと「麗雲兄上をどう思いますか?」と聞いてみた。
すると江凱は「よく分かんねー」と答える。
「なんかよー、あいつってちゃんと面倒見がいい兄貴って所もあるけどよ、なんか捉えどころがないんだよなぁ……」
「まぁ、確かにそうですね」
天耀もそれに同意し、何かを考えた後。
「では」と江凱に別れを告げて、今度は麗雲の宮へと一人で向かった。
麗雲は涼しくなってきた湖の東屋で、景色を眺めている。
傍らには謡尾が立っていた。
「過ごしやすくなってきましたね、麗雲兄上」
そう声を掛けて天耀は兄に近付き。麗雲は顔をほんの少しだけ弟に向けて、でもすぐに元に戻して「そうだね」と答える。
「どうしたんだい? 従獣も連れず何の連絡もなしに……。何か、あったのかな?」
麗雲のその言葉に、天耀の顔が引き締まる。
「少し、聞きたい事ができまして」
「何だい?」
麗雲は特に天耀に目を合わせる訳でもなく、ただ静かに聞く態勢を取っていた。
「謡尾の、アルカナについてです」
大人しくしていた謡尾の耳が素早く動き、そして尻尾がゆらりと揺れる。
「その前に、まずは蘇月の話をしますが。
彼女は行方をくらます前に二人の人物と喧嘩をしているんです。
私はその詳細を聞いたのですが……。蘇月の性格を考えると、その喧嘩にはやや違和感がありまして。
そして相手の方にも、技量や性格を考えると蘇月以上に違和感があったのです」
墨が蘇月をアルカナで攻撃した話は公言していない。なので伏せて天耀は麗雲達に説明をする。
「更に藍月もここに来てから二回、彼女らしくない行動をとった事がありました」
「ふうん……。いったいいつだい?」
麗雲はようやっと天耀に顔を向けた。
何か楽しい事を待っているかのような微笑みを携えて。
「一度目は藍月……あの時は雪でしたが、と謡尾を戦わせた時です。
そして二度目は茶会の日ですね」
「なるほど……」
麗雲はますます何か、楽しい事が待っているかのような顔をする。
まるで、無邪気な子供の様に。
「そしてそれらには、ある共通点があったんです」
「何かな?」
動じない麗雲に天耀は深呼吸すると、口を開く。
「それは、そのどの日も、謡尾が楽器を演奏している事です」
蘇月が失踪した璃琳誕生日の宴の日、謡尾は楽器を演奏していた。
そして璃琳はともかく蘇月が喧嘩をしたり、墨があんなに訓練し制御を覚えていたアルカナで攻撃したりと、らしくもない行動に出たのはどちらも謡尾の演奏を聞いた後だ。
更に藍月が寝起きとは言え主を傷付けるような真似をしたり、従獣の何たるかを理解し動いているはずなのに些細な事で天耀と喧嘩をしたりと、よくよく考えれば可笑しな行動も謡尾の演奏を聞いた後に起きている。
「謡尾のアルカナは、本当に眩暈を引き起こす様な物だけなのですか?
それに貴方はよく私に会いに来ていましたが、それも私達の様子を窺っていたのではないですか?」
そんな弟の発言に麗雲は怒る事はもちろんせず、ただ嬉しそうな顔を向け。
謡尾は『やるじゃん』と言いたげに尻尾を左右にフニャリフニャリとゆっくり揺らしていた。
「まぁ、天耀に会いに行っていたのは天舞に会いに行くついでって所もあったけどね」
そう言って彼はフフッと笑うと
「天耀には本当にいつも楽しませてもらっていたから、お詫びとお礼を兼ねて、とある昔話を教えてあげるよ」
と、再び景色を眺めながら語りだす。
「昔ね、神様が居たんだ。
その神様はある日、気まぐれに人間と会話ができる動物を創ろうと思った。
更に神様は彼らをすぐに死なない様に人間より丈夫にし、人間を手助けしてくれる良き友として共存できる心を付けて創り上げた。
なのに人間は……彼らを勝手の恐れ、使役し、道具の様に扱った。
時にはその行為が行き過ぎる事もあったから神様はそういった人間に罰を与えながら、何年も、何十年も絶望に暮れて過ごしていた。
そしてある日、思ったんだ。
『人間として人間を傍で観察してみよう』と……。
そして神様は、とある国の皇子として生まれましたとさ」
麗雲は再び天耀に顔を向ける。
穏やかな顔をしていた。
ただ、彼の瞳には……人間の物ではない何か怪しげな光を宿しているようで、不安になった天耀は「麗雲兄上?」と小さく声を掛ける。
「僕はね、人間として人間を傍で観察し、これからどうするかを決めようと思ったんだ。
時にアルカナを使って人の本能が出やすいようにしてね」
そして麗雲は謡尾に視線を送る。
「それでもし人間と亜人の関係に見込みがなければ、亜人を消してしまおうと考えていたけど……。
少なくともここの人間は亜人に対して残酷に成り切れていなかった。
父上も蘇月のあの力を前にして、情が勝っていた。
だからね、やめたんだ。
もう少し様子を見てみようかと思ってね」
天耀は理解した。
『あぁ、この人は人間ではないのだ。
別の、ナニカなのだ』
と……。*3
しかし、恐ろしさはない。ただ、何故か不安が心をよぎっていた。
そんな弟をよそに、麗雲は話を続ける。
「それにね、人間と亜人の間にできた男の子と女の子が、人間と結ばれて子供ができたんだ」
麗雲は本当に嬉しそうな顔を天耀に向ける。
「これは、奇跡だよ。天耀。
だからもう私が何か手出しをしなくとも、この二つの種族は上手くやっていける予感がするんだよ」
そう言って麗雲は立ち上がると、謡尾の隣に立つ。
「天耀。僕は旅に出る。
もっと色々、見てみたいから。
あぁ、もちろん帰って来るよ。それまで、ここの事を頼んだからね……」
突然、季節外れの桜の花びらが舞う。
「麗雲兄上!」
天耀は兄の名を叫び手を伸ばす。
しかし花びらは強風と共に数を増し、麗雲と謡尾を包み込み、天耀はあまりの風に目を腕で覆い、そして……。
天耀が腕をどけると、二人の姿は消えていた。
それどころか花びらも残っていない。
まるで、元から何もなかったかのように……。
◆
麗雲がいつものように天舞に会いに来た。
近くに謡尾はいない。
そして天舞の目にはその日はちょっと、様子が違うように見えた。
「麗雲様、何かありましたか?」
さすがに心配で天舞が様子を窺うように麗雲に尋ねると
「うん。この宮廷を出て旅に出る事にしたんだ」
と答える。
「え?!」
驚く天舞に「もちろん何年かしたら戻って来るよ」と笑顔で伝え、続けて
「もし戻った時、天舞がまだ結婚していなかったら、僕と結婚してくれるかい?」
と聞く。
天舞はしばし考えて……。
「じゃぁ、早めにいい人を見つけて結婚しておきますね」
いつもの、今日のお夕食は何を食べようか? という話をする様な調子で答えた。
すると麗雲は柔らかく微笑んで、その微笑みがいつもと違う気がしたから「麗雲様?」と天舞は不安になり声を掛ける。
その時だ。季節外れの桜の花びらが辺り一面に吹き荒れ、目を瞑った天舞が再び目を開くと、そこに麗雲の姿はなかった。
天舞は夏至祭に送られたペンダントを握りしめると
「麗雲様……」
と少し、寂しそうに呟いた。
◆
旅の音楽家ですと言う様な格好をした麗雲と謡尾が、二人畑のあぜ道を歩いている。
「ねえ、どうしてあの時、僕のアルカナを少しだけ使わせたの?
もっと強く影響を与えるようにすれば、本能的な部分がよく見えたのに」
謡尾のアルカナは楽器などの音を媒介に、生き物の視聴覚を乱したり感情を高ぶらせたりする事ができるアルカナだ。
だからもっとアルカナを強力にして使えば、人間はたちまち野生の獣の様に本能的にもなる。
しかし麗雲はこう答えた。
「そこまでするのは僕も本望ではないからね。それに、謡尾にそんな酷な事をさせるのは可哀そうだから」
「はぁ? じゃぁ、野良の子猫を人間にするのは可哀そうじゃないっていうの?
おまけに性別だってさ……」
不機嫌そうにそう言う謡尾に麗雲は微笑む。
「謡尾は今、幸せじゃないのかい?」
「……幸せだけど」
そう言って二人は歩いて行った。
◆
麗雲はこうして姿を消した。
そして、一国の皇子が行方不明だというのに、一部の人間を除きほとんどの者は不自然なほどに騒ぐ事をしなかった。
しかし天耀は思う。
きっと、麗雲兄上が何か術でも掛けたのだろう。
と……。
第六十九話『麗雲』終
後になって、麗雲のカットを時々入れればよかった! なった。
楽器を演奏していて何か考えていたり、天耀達を見て含み笑いをしたりとか。
というワケで。
クトゥルフ神話TRPG好きなので、それっぽい要素を盛っていました。
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