Dへの扉

謎生物、地球でやりたい事をする

長閑な国の王とケモノ 第六十四話 参の夏『倒れた皇帝』

これは『著者:藤間麗 / 出版社:小学館』が権利を有する漫画『王の獣~掩蔽のアルカナ~』の非公式二次創作物です


◆注意する事ばかりで長くなった注意◆

 これは

  • 重度の中二病患者が作った黒歴史濃度の高い「アタイの考えたサイキョーの王ケモ設定!」
  • 原作のネタバレと世界観&キャラ崩壊
  • 女体化
  • 原作を読んでいる事前提だが、読んでいても意味が分かるとは限らない
  • 滲み出る変態性

 を含みます。
 そして私は

  • 小説・漫画・絵等を書くor描くのが得意ではない*1
  • あっぱっぱーだし中華風ファンタジーはもちろん書けん!
  • 王の獣は単行本7巻まで持っているが、それ以外は試し読みや読者の感想等で得た知識しかない*2
  • 王の獣のキャラが好きだがアンチという矛盾の存在

 です。
 それでも見たい人は続きへGO! GO!


第六十四話 参の夏『倒れた皇帝』

「天耀、お前の言うとおりだよ。
 怖かったんだ。愛した女の娘が同じ末路を辿るのが。
 だから、閉じ込めた。もう誰にも奪われない様に、傷付けられない様に。蘇月の自由を奪ってまで。
 藍月にアルカナの気配を感じた後は宮廷に置き、彊虎に監視させ、茶会の日に藍月のアルカナの有無を見極める為に痺れ薬を混ぜた。
 そうやってアルカナがあると確信を得たら、蘇月と共に閉じ込める為に」
 宗現は自身の事を打ち明け終わり、深く息を吐き肩の力を抜く。
 そんな父に天耀は「父上、他に言う事はありますか?」と、怒った顔を向けた。
 その息子の態度に「ふむ」と宗現は藍月に顔を向ける。
「藍月は、ずっと苦しんでいました。
 蘇月がいなくなった時、自分と同じアルカナを持ってるが故の誘拐ではと疑ってから、蘇月がどうなっているか分からず、辛い思いをしているのではないか、心を壊してしまったのではないかと」
 そう言って天耀は藍月の隣に立ち、彼女の肩をそっと引き寄せた。
 藍月はそんな天耀に驚いた眼を向けつつも、嬉しさで心をじんわりとさせ。そして蘇月はハッとした顔をする。
「彼女はずっと、六年間も、苦しんでいたんです」
「分かっている」
 宗現はそう言うと藍月と向き合った。
「藍月。お前には随分と辛い思いをさせてしまっていた。そして私はそれを知っていたのに、何もしてこなかった。
 許してほしいとは思わない。ただ、これだけは言わせてくれ。
 人生を狂わせてしまって、申し訳なかった、藍月」
 皇帝陛下である宗現は藍月に頭を垂れ……しかし体を起こすと藍月の胸を見た。藍月は今、フリフリロリータファッションを身に着けていてサラシは巻いていない。
「父上! どこ見てるんですか!!!」
「すまない、すまない」
 宗現は笑って、そして顔を引き締める。
「さて。それでこれから、だが。
 私のしてきた事は息子達にばれてしまったし、私もそろそろ皇帝を引退する身でな。そもそも、もうこんな事……私は疲れてしまったよ。
 なので今後どうするかは息子達に任せるつもりだ。
 だがその前に、蘇月の気持ちを聞きたいと思う」
 宗現はそう言い蘇月に顔を向け、微笑む。
「蘇月、お前はどうしたい?」
「え……?」
 蘇月は急に選択を迫られ、戸惑った。
 そこに藍月が体を寄せつつ、そっと耳打ちする。
「蘇月、僕なら蘇月を連れてここを逃げる事が出来る。そのまま二人で暮らす事も……」
 藍月は今まで、蘇月を探す傍ら蘇月を見つけ出した後に二人で暮らせる場所もいくつか目星を付けていたのだ。
 そして、蘇月の心が壊れていた場合。天耀達の元には戻らず、そこでひっそり暮らそうと考えていた。
「藍ちゃん……」
 蘇月は困った顔をしてしばし俯き……。
 チラリと太博を見た。
 太博は自分の場違いさに戸惑いつつも、様々な情報に驚き、しかし努めて冷静でいる事を心掛け、邪魔にならない様大人しくしている。
 そんな太博を見てから。蘇月は顔を上げると「私……。私、ここから出たい……!」と言い放った。
「でも、藍ちゃんとどこかに行くんじゃなくて、宮廷に残りたいんです!
 また、天耀様の従獣として働いて、時々でいいから藍ちゃんに会って……。
 前みたいに、戻りたい。です……」
 最後は自信なさげに再び俯きながらも、彼女は自分の気持ちを打ち明け。
「そうか。では、息子達に蘇月の意見を重視させるようお願いしておこう」
 宗現は蘇月の言葉に安心したように微笑み。
「今まで、不自由な思いをさせてすまなかったな、蘇月」
 そう言い残し、倒れた。

「宗現様はもうずいぶんと無理をなされている。金華様を失った後から、特に。
 亜人ではない人間の身の上では耐えられないほどに働いて、体を壊して……。
 医官から働き過ぎだと言われても、私が何度説得しても、休む事をしてくれなかった。
 それに、蘇月の事でも気を病んでおられた」
 ベッドで眠る宗現を見つめながら彊虎はそう語る。

 ここは秘密基地の宗現の部屋だ。
 宗現が倒れた後。太博は医官を呼びに行き、突然顔を出した墨は璃琳と江凱に事情を説明しに行くと告げて再び姿を消し、残った者はこの部屋に宗現を運びベッドに寝かせた。
 宗現は初めこそ苦し気な息遣いをしていたが、今はすっかり落ち着いて安らかな寝息を立てている。
 そして今はベッドの両脇に彊虎と蘇月が座り、天耀と藍月は並んで立って金華が宗現の隣に座り微笑んでいる大きな絵画をじっと見つめつつ、彊虎の話を静かに聞いていた。
「私は……そんな宗現様を見ていられなくなり、ある日こう言ったのだ。
 蘇月のアルカナを研究し、有効活用しようと」
 突然の告白に天耀と藍月は驚いて彊虎の方を向く。
「酷い父親だろう。
 まぁ。父親らしい事など、今まで一切して来なかったがな……」
 そう彊虎は自嘲気味に笑い、蘇月は悲し気に目を閉じ首を横に振る。
 そんな蘇月の仕草など目に入っているのかいないのか、彊虎は蘇月を有効活用しようと告げた日の事を語り出したのだ。

+◇+

 宗現様は皇子の時から皇帝になった今までの間に、徐々にこの国を変えていった。
 アルカナ持ちの無茶な繁殖をやめさせ、身分と権力を盾に好き勝手する貴族を制圧し、全ての人は救えなくとも少しでも多くの人々を救おうと働き続けていた。
 彼の息子達もその血を受け継いでいるのか、とても優秀だ。
 しかし私は彼ほどの逸材はもう生まれてこないのでは? と、そう常々感じていたのだ。
 そんな折である。宗現様が働き過ぎで体を壊し始めたのは。

 宗現様は医官から何と言われようと、私がいくら説得しようと、休む事をしてくれなかった。
 だから私は提案したのだ。
 蘇月のアルカナを研究しようと。
 それにこの研究が上手く行けば、体が欠損するような大怪我をした亜人を処分から救える。
 それが軍部に所属している者ならば、結果的に戦力を失わずに済む。
 そして、もしかしたら永遠の命も手に入るかもしれない。

「私は貴方にいつまでも生きて、この国を永遠に収めてほしいと思っています」
 思わずついた本音に、宗現様は「これはまたずいぶんと酔狂なお願いだなぁ」と困ったように笑い。
 ある話をしてくれた。
「昔な、亜人と同じ力を手に入れようとした人間が亜人を食べ……最後は頭をおかしくして死んだ事がある」*3
 欲をかくとろくな事にならないものだよ、彊虎。
 そもそも。私は娘の様に思っているあの子に、その様な事はしたくないんだ。
 そして、永遠はこの世界にはない。
 例え私が永遠の命を手に入れたとしても、いつか私は変わってしまうだろう。
 そう。いつか彊虎が好いてくれる私では、いられなくなってしまうよ」
 宗現様は悲し気に私に微笑み。
「だから、分かってくれ。彊虎。
 それと、もし蘇月に何かおかしなことをした時は……私はお前を殺さなくてはいけない。そんな事で私の手を汚させるような事は、しないでおくれよ」

+◇+

「それから私はそのような事を一切言わない事にした。
 宗現様は蘇月を実の娘の様に愛しているし、だからこそこのように閉じ込めて置く事に常に疑問を感じていた。
 これは蘇月の幸せの為になるのかと。
 ただでさえこの事が疲れ切った体に負担を掛けているというのに、私まで負担を掛ける事はしたくなかったのだ」
 その話を特に驚く事なく*4、ただ悲し気に聞いていた蘇月が口を開く。
「あのね、藍ちゃん。
 私、藍ちゃんにアルカナがあるって、知ってたの。今じゃなくて、子供の頃に」
「え……?」
 再び驚く藍月と意外そうな顔をする天耀と彊虎に、蘇月は続きを話す。
「まだ私達がお母さんと暮らしてた時。私、夜中に目を覚ました時があったの。
 そしたら藍ちゃんもお母さんも居なくて……。
 どこに行ったんだろうって何だか不安で。私、探しに行ったんだ。
 そしたら、すぐに見つかったんだけど……お母さんは刃物を持ってて、藍ちゃんの腕を傷付けてて……。
 私、怖くなっちゃって直ぐに部屋に戻ってお布団にくるまって、気が付いたら朝だった。
 慌てて隣を見たら藍ちゃんが寝てるし、お母さんがご飯の準備をしている音もしたし、寝ている藍ちゃんの腕をそっと見たけど傷は付いていなかったから、あれは寝ぼけて勘違いしたか、夢でも見てたんだって安心したの。
 それから特にそういった事もなく過ごしてたんだけど……」
 蘇月は目を伏せ肩を落とす。
「宗現さんから私のアルカナの話を聞いた時。私あの日の事を想い出して、あれって勘違いや夢じゃなかったって分かったの。
 それに私が従獣になるのを藍ちゃんが凄く嫌がった理由も、何となく分かった。
 でもこの時、藍ちゃんはきっとアルカナの使い方が上手なんだろう。とも思って。
 だって、一緒に暮らしててこんなアルカナがある事に私、気が付かなかったから。
 だから、私が黙ってれば妓楼で働く事にはなるけど……ここで暮らすよりはいいよね。
 って私、この事はずっと宗現さん達に黙ってたの。
 それから、宗現さんからお母さんが死んだ理由をちゃんと聞いた時。*5
 宗現さんが本当は私が外にいるのが怖いんだっていうのも、何となく分かった。
 お母さんみたいになっちゃうのが、嫌なんだろうなって。
 だからずっとここに居ようって思った。
 だって、私一人が我慢すればいい事だから。
 そうすれば皆幸せだって。
 私、藍ちゃんも宗現さんも幸せにできてるって、そう思い上がってた。
 でも、全然違った。
 宗現さんは私を閉じ込めて置く事に罪悪感を持ってたし、藍ちゃんはたくさん苦しんでた。
 藍ちゃん達の気持ち、私何も考えてなかったの」
 蘇月の声が震える。
「藍ちゃんがこんなに苦しんでるなんて、考えもしないで……。
 ごめんね、藍ちゃん」
 蘇月は両目いっぱいに涙を溜めて、藍月に謝り。
 そして藍月は首を横に振り。天耀達に見守られる中、蘇月を抱きしめた。

 

第六十四話『倒れた皇帝』終

 

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 全号購入可能。
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 また、マイクロ&単行本で修正された箇所が電子版でも元の状態で見られると思われるので、単行本とセットで買って変化を楽しみたい人向け。

 

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 1巻で大体1話分くらいが見られる。(ページ数による)
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 12巻まで発売中。
 1巻に大体4話入ってる。(1話分のページ数による)
 時間が掛かってもある程度安くまとめて読みたい人向け。

 

*1:なお、小説を賞に応募した事もあるが1次審査すら通過した事はなかったし、評価シートありの所では常に構成の評価が最低ランクだった

*2:試し読みや読者の感想等も36話くらいでよく見なくなり、大して分からない

*3:こちらの世界では人間が亜人を食べると、異常プリオンになる確率がめっちゃ上がる

*4:そもそも蘇月は宗現の体を良くしたくて、房中術を提案している

*5:ちなみに藍月は雪の時に孔先から詳細を聞いている